ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2021.12.13
カートリッジ

カートリッジについて Vol.13 SPU編Ⅲ

このページでは、「カートリッジについて」のVol.13をお送りします。

本ページは、レコード針(カートリッジ)についての専門的な内容となる、オルトフォンのMCカートリッジの祖となったSPUの機種紹介に関する内容の記述を中心としています。基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「カートリッジについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

SPUサウンドの根幹、アルミカンチレバー

SPUシリーズは、60年以上の歴史の中で多彩なバリエーションを生み出してきました。その内容はスタイラスチップコイル巻線を高性能・高純度化したり、シェル素材の変更や磁気回路のハイパワー化・小型化など様々ですが、全てのSPUに共通している点がひとつあります。

それはカンチレバーの素材をアルミ合金製のパイプとしていることです。このアルミカンチレバーこそ、SPUシリーズのサウンドをつくり出している極めて重要な要素で、重厚でふくよかと評される音色を彩る生命線でもあります。アルミ特有の、くせが無く素直で他素材に比べて柔らかな音色は、SPUの音づくりには欠かせない存在です。このため、オルトフォンでも昨今よく使用される宝石系素材のカンチレバーは現在に至るまで使用されたことがありません。

なお下の動画は、本邦におけるアナログ研究の第一人者である海老沢 徹 先生が、アルミカンチレバーが使用される理由について解説しているものです。カンチレバーに用いられている合金の組成など、非常に踏み込んだ内容についても述べられておりますので併せてご参照ください。


SPUの丸針と楕円針の判別方法

SPUシリーズのうち、Classicシリーズ#1シリーズには丸針楕円針という2種類のラインナップがあります。この2種類は、ヘッドシェル裏側のカバーに貼られたそれぞれの針先を示す表記によって見分けることが可能です。その見分け方を、SPU #1シリーズを例として以下にご説明します。

①丸針(Spherical)


SPUシリーズのうち、丸針を使用したモデルはボトムカバーもしくはシェルに「DIAM. 17」もしくは「DIAM. 25」(モノラル用、下の写真参照)と書かれたシールが貼られています。なお、SPU #1Sの末尾にある「S」は、丸針のSphericalの頭文字を取ったものです。

②楕円針(Elliptical)

楕円針を使用したモデルは、ボトムカバーもしくはシェルに「ELLIPTICAL DIAMOND」と書かれたシールが貼られています。SPU #1ESPU Classic GE MkⅡなどの末尾にある「E」は、楕円針のEllipticalの頭文字を取ったものです。

多彩なラインナップを誇るSPUシリーズ

SPUのシリーズは、おおまかに区別すると2021年現在では下記の8種類に分けられます。それぞれのシリーズには共通のサウンドコンセプトがありますので、それを含めた概要と使用しているスタイラスチップを以下にご説明します。

Ⅰ.SPU Classicシリーズ

Ⅱ.SPU #1シリーズ

Ⅲ.SPU Meisterシリーズ

Ⅳ.SPU Gold、Reference、Royalシリーズ

Ⅴ.SPU Synergy

Ⅵ.SPU Anniversaryシリーズ

Ⅶ.The SPU Century

Ⅷ.SPU Wood A


Ⅰ.SPU Classicシリーズ

全てのSPUの元祖となった、通称「オールド・SPU」の設計を最も色濃く受け継いだオーソドックス(正統)なシリーズです。先述の「SPUの丸針と楕円針の判別方法」で述べた通り、丸針タイプのSPU Classic Gと楕円針タイプのSPU Classic GEの2モデルがあります。現代の正統なSPUサウンドを求めるなら、まずはClassicシリーズをおすすめします。

Classicシリーズの外観上の特徴としては、シェル天面バッジは黒地に筆記体の「Ortofon」ロゴ、ボトムカバーは、シェルのフィンガー(持ち手)とコネクターは銀色です。

なお、下の写真は先代機のSPU Classic Gですが、当時はヘッドシェルの素材がアルミ合金製となっていました。現在のMkⅡシリーズ(上の写真)では、シェル素材が木粉と樹脂を配合したものに変更されました(ユニットは初代・MkⅡともに共通)。

Ⅱ.SPU #1(ナンバーワン)シリーズ

SPU Classicシリーズをベースとして、SPUをさらに身近に感じて頂きたいというコンセプトから誕生したエントリーモデルがSPU #1シリーズです。

先述の「SPUの丸針と楕円針の判別方法」で述べた通り、丸針タイプのSPU #1Sと楕円針タイプのSPU #1Eの2モデルがあります。

#1シリーズの外観上の特徴としては、シェル天面バッジは黒地に筆記体の「Ortofon」ロゴ、ボトムカバーは白、シェルのフィンガー(持ち手)とコネクターは銀色です。ここまではClassicシリーズと共通ですが、下の写真のようにヘッドシェル後端右側に「#1」のマークがデザインされています。このマークの有無で、#1シリーズとClassicシリーズを外観上で見分けることが可能です。

Ⅲ.SPU Meisterシリーズ

ロバート・グッドマンセン氏のシグネチャー・モデルであるSPU Meister Silver MkⅡは、強力なネオジウム・マグネットと高純度銀線のコイル巻線、伝統の楕円を使用しており、低音域は重厚でありつつ銀由来の煌びやかな高音域を特徴としています。

後述のRoyalやSynergyと比較した際の特徴としては、Meister Silverは特にこの重厚感が際立つモデルにつき、低音域を重く再生したい場合や大編成の弦楽器を中心とするオーケストラなどにおすすめします。

またMeisterシリーズのうち、上に挙げたMeister Silverのシェル天面バッジは青地に筆記体の「Ortofon」ロゴ、ボトムカバーとシェル側面の「R. Gudmandsen」サインは、シェルのフィンガー(持ち手)とコネクターは銀色です。なお、Meister Silverも当初はヘッドシェルの素材がアルミ合金製となっていましたが、現行のMkⅡシリーズ(上の写真)へのモデルチェンジに伴い、シェル素材が木粉と樹脂を配合したものに変更されました(ユニットは初代・MkⅡともに共通)。

そしてMeister Silverの先代シリーズにあたるSPU Meister(下の写真左)はシェル天面のバッジが、ボトムカバーがで他は共通となっています。

さらに、Meisterの血を色濃く引いているSpiritとEthos(下の写真右)は、シェル天面バッジは金地に筆記体の「Ortofon」ロゴ、シェル表面は黒色の艶仕上げ、側面のサインとフィンガー、コネクターが金色という点は共通ですが、ボトムカバーが(Spirit)と(Ethos)という違いがあります。

Ⅳ.SPU Gold、Reference、Royalシリーズ

SPU Royal G MkⅡを現行機種とするこのシリーズは、SPUシリーズの中で最初に誕生した上位グレードのモデルです。
1981年に発表されたSPU Gold GE/AEは特殊選別された楕円針と銀線コイルを使用し、SPUサウンドに新たな境地が存在することを示しました。これは後にSPU Reference G/Aにアップグレードされ、レプリカント100(下図)スタイラスと6N高純度銅線のコイル巻線を使用しています。

そして、1998年のオルトフォン創立80周年を記念して誕生したのがSPU Royal G/Aです。レプリカント100の使用はそのまま、コイル巻線はエレクトラムへと進化しました。なお、SPU RoyalからはNaked(ネイキッド)を意味する一般ヘッドシェル取付用モデル、SPU Royal N(下の写真)もラインナップに加わっています。

Meister SilverやSynergyと比較すると、Royalの特徴は極めて繊細でワイドレンジであるという点が挙げられ、小編成もしくは独奏の弦楽器繊細なタッチのピアノやボーカル空間表現を得意としています。

また本シリーズのうち、上に挙げたRoyalのシェル天面バッジは金地にゴシック体の「ortofon since1918」ロゴ、ボトムカバーは、シェルのフィンガー(持ち手)とコネクターは金色です。なお、Royalも当初はヘッドシェルの素材がアルミ合金製となっていましたが、現行のMkⅡシリーズ(上の写真)へのモデルチェンジに伴い、シェル素材が木粉と樹脂を配合したものに変更されました(ユニットは初代・MkⅡ・Nともに共通)。

そしてRoyalのシリーズ初代にあたるSPU Gold GE(下の写真左)はシェル天面のバッジが金地にゴシック体の「ortofon」ロゴで他は共通となっています。

さらにSPU Reference(下の写真右)は、シェル天面バッジが金地にゴシック体の「ortofon reference」ロゴとなっている以外は上記2機種と共通です。

Ⅴ.SPU Synergy

SPU Synergyは、グッドマンセン氏の後継者で次代のチーフエンジニアであったペア・ウィンフェルド氏が、低インピーダンスかつ高出力の理想にこだわって新たに設計したSPUです。SPU Meisterシリーズと同様にネオジウム・マグネット楕円針を採用していますが、そのサウンドはMeisterとは全く異なります。

Synergyのサウンドの特徴は、SPUシリーズの中では最高となる0.5mVの出力電圧によって生み出されるパワフルな音色にあります。Meisterシリーズの重厚感とは異なる、前面に押し出してくるような歯切れのよいサウンドJAZZ金管主体の大編成オーケストラなどにもおすすめです。

SPU Synergyの外観上の特徴としては、シェル天面バッジは金地に筆記体の「Ortofon」ロゴ、ボトムカバーはグレー、シェルのフィンガー(持ち手)とコネクターは金色です。そしてヘッドシェル表面は、黒色の艶仕上げとなっています。


Ⅵ.SPU Anniversaryシリーズ

SPUシリーズのうち、その当時の新技術や特別仕様をふんだんに盛り込んだものがAnniversaryシリーズです。The SPU Century(後述)を除くと現在までに3機種が発表され、いずれも当時のオルトフォンが目指した新時代のSPU像が色濃く反映されました。この3機種のスタイラスチップは、全てが楕円針です。

上の写真は、2003年に創立85周年を記念して発表されたSPU 85Anniversaryです。この製品にあわせて開発されたオーキュラムがオルトフォン製品では初めてコイル巻線に使用されたほか、無垢の楓材から削り出したGシェルに漆塗りを施した、本機限定の特別なヘッドシェルも開発されました。漆塗りの木製Gシェルを使用したSPUは現在に至るまで本機のみにつき、外観での判別も容易です。

その後ユニット部分をSLMで成型し、新型の小型磁気回路を搭載したSPU 90Anniversary(下の写真左)とSPU 95Anniversary(下の写真右)もそれぞれ創立90周年と95周年を記念して発表されました。

SPU 90AnniversaryとSPU 95Anniversaryの外観上の特徴としては、シェル天面バッジは金地に筆記体の「Ortofon」ロゴ、ボトムカバーは、シェルのフィンガー(持ち手)とコネクターは金色です。そしてヘッドシェル表面は黒色の艶仕上げで、シェルの側面に中世北欧のヴァイキングの角笛(90Anniversary)A95のロゴ(95Anniversary)があしらわれています。

なお、下の動画はSPU 90Anniversaryの内部構造を示した3Dデータで、これまでのSPUとはユニットの形状・構造が全く異なることがわかります。

Ⅶ.The SPU Century

2018年、オルトフォンは創立100周年を迎えました。これを記念して誕生したのが、これまでのAnniversaryシリーズの集大成ともいえるThe SPU Centuryです。SPU史上初となるシバタ針(下図)や、本機専用に開発されたSLM成型のアルミ×無垢木材削り出しのハイブリッド型Gシェル銀メッキ高純度銅線の採用によってRoyal以上に極めて高解像度・ワイドレンジなサウンドとなりました。

The SPU Centuryの外観は非常に特徴的で、Gシェルの上部分はアルミ、下部分のボトムカバーが木材削り出しとなっています。シェル天面バッジは金地にゴシック体の「ortofon since1918」ロゴ、シェルの専用フィンガー(持ち手)とコネクターは金色で、シェル後方側面には専用の「100」をモチーフにしたロゴがアレンジされています。

そして下の動画では、コンピューター制御のCNCマシンが、極めて精密な加工によってThe SPU Centuryのボトムカバーを生産している様子をご紹介しています。

Ⅷ.SPU Wood A

業務用モデルからスタートしたAシェルタイプは、一旦すべてが生産終了となりました。しかし、Aシェルの復活を望む声は今もなお根強かったため、オルトフォンはブナの無垢材を切削し、漆塗りを施したAシェルを新規に設計し、SPU Wood Aとして復活させました。

専用ユニットも新規に生産され、スタイラスチップには下図の丸針を使用しています。丸針と漆塗りのAシェルによる、柔らかく美しい響きをもったサウンドが特徴です。

なお、スタイラスチップについての解説は「カートリッジについて Vol.2 スタイラスチップ編」を、カンチレバーについては「カートリッジについて Vol.3 カンチレバー編」、磁気回路については「カートリッジについて Vol.4 磁気回路編」、ハウジングについては「カートリッジについて Vol.5 ハウジング編」、コイル巻線については「カートリッジについて Vol.6 コイル巻線編」、ダンパーについては「カートリッジについて Vol.7 ダンパー編」、WRD・WRADについては「カートリッジについて Vol.8 WRD・WRAD編」、モノラルカートリッジの基礎編については「カートリッジについて Vol.9 モノラル編Ⅰ」、モノラルカートリッジの針先については「カートリッジについて Vol.10 モノラル編Ⅱ」、SPUの基礎については「カートリッジについて Vol.11 SPU編Ⅰ」、SPUの開発に携わったエンジニアについては「カートリッジについて Vol.12 SPU編Ⅱ」、SPUの機種紹介については「カートリッジについて Vol.13 SPU編Ⅲ」をご参照ください。

カートリッジについて Vol.14へ続く

キーワード検索