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アナログオーディオ大全

2021.11.22
カートリッジ
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カートリッジについて Vol.10 モノラル編Ⅱ

このページでは、「カートリッジについて」のVol.10をお送りします。

本ページは、レコード針(カートリッジ)についての専門的な内容となる、モノラルカートリッジの針先形状やそのサイズに関する内容の記述を中心としています。基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「カートリッジについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

モノラル用スタイラスチップについて

モノラルカートリッジ用のスタイラスチップには、一部のハイエンド機、もしくは近年設計された製品を除くと大半に丸針が用いられています。その中でも、モノラルカートリッジに用いられている丸針のスタイラスチップは太さによって下記の3種類に分別されます。

Ⅰ.針先半径2.5~3ミル(約65~76㎛)の丸針

Ⅱ.針先半径1ミル(約25㎛)の丸針

Ⅲ.針先半径0.7ミル(約18㎛)の丸針

本項では、この3種類の丸針スタイラスに加え、オルトフォンのモノラルMCカートリッジでも採用されている楕円針、ファインライン、レプリカント100についてもあらためてご説明します。それぞれのスタイラスの特徴や利点、そして注意点を熟知された上でモノラル再生をお楽しみ頂ければ幸いです。

また、下の動画は本邦におけるアナログ研究の第一人者である海老沢 徹 先生が、モノラル用スタイラスチップを含む針先の形状について解説しているものです。上述の内容についても詳しく述べられておりますので、あわせてご参照ください。

「ミル(mil)」とはなにか

本題に入る前に、本項で多用される「ミル(mil)」という単位についてご説明します。この「ミル」は、「ミリインチ (milli-inch)」とも称されるように英国や米国で用いられているヤード・ポンド法の長さの単位のひとつで、1000分の1インチをあらわします。日本で用いられているメートル法に換算した場合、1ミル=25.4㎛(国際インチにおける値)となります。

現代において「ミル」やインチという単位を目にすることは稀となりましたが、英米を中心に機械製品の製造や規格策定が行われることが多かった時代はヤード・ポンド法でそれが定められ、表記されることが多分にありました。代表例としては、レコード盤の直径である12インチ(約30cm)7インチ(約17㎝)、大口径スピーカーユニットの代名詞である15インチ(約38cm)などが挙げられます。

レコード針の生産においてもこの単位がそのまま用いられることが多かったため、スタイラスチップの半径を示す際には今なおこの「ミル」表記を用いた文献も存在します。本項でも「ミル」表記と「マイクロメートル(㎛)」表記の双方を扱うため、先にご説明させて頂きました。

Ⅰ.針先半径2.5~3ミル(約65~76㎛)の丸針

このスタイラスチップは、戦前から戦後すぐにかけて普及していた78回転のSP(Standard Play)レコード盤専用に用いられているもので、針先の形状や寸法などは蓄音機用の鉄針などから引き継がれています。上図の通り、針先の半径が2.5~3ミルと最も太く、LPレコードの音溝には収まらないサイズのためLPやEP盤を再生することは不可能です。その逆も然りで、SPレコードを再生する際は専用の針先であるこのスタイラスチップでなくては再生できません。

弊社製品では、CG65Di MkⅡ2M 78にこのスタイラスが用いられており(CG「65」という型番はこの針先半径に由来します)、いずれもSP盤再生専用のカートリッジとなっています。また、このスタイラスはダイアモンドでできているため、蓄音機用の鉄針とは異なり数回の再生で針先交換を行う必要はありません。


Ⅱ.針先半径1ミル(約25㎛)の丸針

このスタイラスチップは、1948年に発売されたモノラルLP(Long Play)再生用のものです。針先半径が2.5~3ミルあったSP盤用スタイラスに比べはるかに小さな、針先半径1ミルのスタイラスの登場によって、SP盤に比べ音溝が狭く、その分長時間再生を行うモノラルLP盤の再生が可能となりました。

弊社製品では、CG25Di MkⅡSPU Mono G MkⅡにこのスタイラスが用いられており(CG「25」という型番はこの針先半径に由来します)、いずれもモノラルLP盤再生用のカートリッジとなっています。なお、先項で説明しました通り、CG25Di MkⅡでステレオLPを再生することはできません。

Ⅲ.針先半径0.7ミル(約18㎛)の丸針

このスタイラスチップは、1958年に発売されたステレオLPレコードに対応して普及するようになりました。モノラルLP用のそれが針先半径1ミルであるのに対し、0.7ミルと小さくなっています。その理由は、ステレオLP盤の音溝の構造に起因します。

上図はステレオLP(左)とモノラルLP(右)の音溝を模式図として示したものです。横方向の振動だけが刻まれ、音溝の表面に凹凸がないモノラルLPに比べ、ステレオLPの音溝には縦振動が刻まれているため表面に凹凸が存在します。この凹凸のうちの凸が左右の両チャンネルで重なると部分的に音溝が狭くなり、モノラル用の針先半径1ミルのスタイラスでは太すぎて音溝をトレースできない可能性があるため、針先半径の小さい(針先が細い)0.7ミルの丸針が使用されるようになりました。

弊社製品では、SPU Classic G MkⅡをはじめとする多くのステレオカートリッジと、2M Monoにこのスタイラスが用いられています。近年とみに増加しつつあるステレオ仕様のカッター針でカッティングされたモノラル再発盤の音溝に対しては、このスタイラスや後述の無垢楕円針またはファインライン、レプリカント100がマッチします。

そして上述の理由により、針先半径1ミルのスタイラスを使用しているSPU Mono G MkⅡでステレオ盤を再生すると、スタイラスチップの太さが原因でステレオ盤の音溝をトレースできない場合がありますのでご注意ください。


Ⅳ.無垢楕円針、ファインライン、ラインコンタクト

これらのスタイラスチップは、ステレオカートリッジでも用いられているものと同一です。その中でも特に、楕円針の一種であるファインライン、ラインコンタクト針の一種であるシバタ針オルトフォン・レプリカント100は、極めて高解像度な新次元のモノラル再生を可能としています。

弊社製品では、MC Q Monoに無垢楕円針、MC Cadenza Monoにファインライン、MC A Monoにオルトフォン・レプリカント100が使用されています。また、かつてはシバタ針を用いたモデルも存在しました。

これらの高性能スタイラスは、ステレオ仕様のカッター針でカッティングされたモノラル再発盤の音溝を完璧にトレースすることが可能です。

なお、スタイラスチップについての解説は「カートリッジについて Vol.2 スタイラスチップ編」を、カンチレバーについては「カートリッジについて Vol.3 カンチレバー編」、磁気回路については「カートリッジについて Vol.4 磁気回路編」、ハウジングについては「カートリッジについて Vol.5 ハウジング編」、コイル巻線については「カートリッジについて Vol.6 コイル巻線編」、ダンパーについては「カートリッジについて Vol.7 ダンパー編」、WRD・WRADについては「カートリッジについて Vol.8 WRD・WRAD編」、モノラルカートリッジ初級編については「カートリッジについて Vol.9 モノラル編Ⅰ」をご参照ください。


カートリッジについて Vol.11へ続く(工事中)

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