ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2023.12.21
レコード盤

レコード盤について Vol.1 基礎編

本ページでは、レコード針(カートリッジ)を用いて再生する、レコード盤(アナログレコード)についての解説を行います。

最初にスタイラスカバーの概要を述べた後に、この『アナログオーディオ大全』の他ページや弊社公式Youtubeチャンネルも交えて具体的な内容をお伝えします。

なお、カートリッジそのものについての基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「カートリッジについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

レコード盤とは

『レコード盤』は、一般的に円盤(ディスク)の表面に螺旋状の音溝を刻み、音声を振動に変換して記録しているメディアのことを指します。

レコード盤表面の音溝をレコード針(カートリッジ)によってなぞる(トレースする)ことで、レコード盤の音溝に凹凸として記録された振動を再び音声へと変換することが可能です。

そのため、蓄音機やレコード再生用のプレーヤーを用いてレコード盤の再生を行う際は、盤面に「針を下ろす」作業を行い、カートリッジの先端にある機械式のセンサー部分(カンチレバーおよびスタイラスチップ。蓄音機の場合は鉄などの針が取り付けられたサウンドボックス)を、直接音溝に触れさせて信号の読み取りを行う必要があります(一部の特殊なプレーヤー製品を除く)。

ステレオ録音(左)/モノラル録音(右)音溝の模式図

またレコード盤の音溝は、一部の特殊な製品を除いてステレオ(上図左)/モノラル(上図右)の2パターンに大別されます。

ステレオ信号が刻まれた音溝には2チャンネル分の音声信号が、モノラル信号が刻まれた音溝には1チャンネルの音声信号が刻まれています。

19世紀末にエミール・ベルリナーによって実用化された円盤式蓄音機から1950年代まではモノラル盤の時代でしたが、1958年のステレオレコード発売により量産品のレコードで2チャンネルの同時再生を行うことが可能となりました。

その後、1970年代末に開発が本格化したDAD(Digital Audio Disc)が1982年にCD(Compact Disc)として発売されるとレコード盤の生産枚数は激減しましたが、2010年代以降に本格化したミュージックシーンにおけるレコード盤の世界的な再評価により、今日では再びCDの生産枚数を超える数量のレコードが生産されています。

なお下の動画は、本邦におけるアナログ研究の第一人者である海老沢 徹 先生が、アナログレコードの復権を自身のこととして実感したエピソードについて述べているものです。レコード針だけでなく、レコード盤の製作現場にも立ち会っていた先生ならではのお話となっておりますので併せてご参照ください。



Ⅰ.レコード盤の回転数について

先に述べたCDなどのデジタル・ディスクとは異なり、レコード盤には個々の盤に再生時の回転数が指定されています。これはレコード盤の1分間の回転数(英:revolutions per minute、rpm)を示しており、概ね「33 1/3回転」と「45回転」、「78回転」の3種類に大別されています。特にLPレコードの実用化(1948年)以降は、新規にプレスされるレコード盤はほぼ全てが33 1/3もしくは45回転のどちらかとなっており、以下にその詳細を解説してゆきます。

ⅰ.33 1/3回転盤

33 1/3回転盤のレーベル面表記例

現代では、「レコード盤」といえば33 1/3回転(便宜上、この先では33回転と表記)盤がその大多数を占めています。33回転盤は多くがアーティストのアルバムやオムニバス盤として、また長大なクラシック音楽を収めるために選択されており、12インチ盤(後述)かつ33回転の場合は片面に約30分程度の収録が可能です。このような盤はLPLong Play)と呼ばれており、78回転のSP盤との対比を考慮して名付けられました。

ⅱ.45回転盤

45回転盤のレーベル面表記例

45回転盤は、当初ジューク・ボックスなどの連続自動再生機器への使用を想定して誕生しました。当初は直径7インチ(約17㎝)程度のシングル盤が多数を占めていたため45回転=シングル盤とみられることもあり、また片面に2~3曲程度が収録されているものはシングルの拡張版という意でEP(Extended Play)盤と呼ばれることもあります。

ただ12インチ(約30cm)盤を45回転仕様とした高音質レコードも存在しており、近年プレスされる45回転盤はこの高音質盤であるパターンも増えてきました。


ⅲ.78回転盤

78回転盤のレーベル面表記例

78回転盤は、(一般的に)わが国では「SP盤、SPレコード」の名称で知られているレコード盤の同義語です。SP盤の「SP」はStandard Playingの頭文字に由来し、先に述べたLPレコードの登場後に後から付けられた呼称です。そのため、1948年のLPレコード市販までは単に「レコード」と認識されていました。

また78回転盤を指して「シェラック盤」と呼称することもありますが、これは盤の原料にシェラックと呼ばれるカイガラムシの分泌する樹脂状素材が用いられていたためです。塩化ビニルを主原料とするLPレコードとは異なり弾性がなく硬いため、落下や強い衝撃などの原因で割れてしまうことがあります。更に、レコード針をトレースする音溝の幅が太いため、再生にあたってはそのサイズに合致した専用の針(蓄音機の場合、鉄針など)やカートリッジを必要とします。

なお、SP盤は多くが78回転となっていますが、一部の盤では回転数が80回転、もしくはそれ以上となっているものも存在します。このような盤は20世紀初頭の機械式録音の時代に製造されたものに多く、再生時には蓄音機やレコードプレーヤーの回転数ピッチをコントロールする機能を使用する必要があります。

なお下の動画は、本邦におけるアナログ研究の第一人者である海老沢 徹 先生が、レコード盤の回転数が決定された歴史的経緯について述べているものです。ここまでの解説以上に更に詳しくご説明を頂いておりますので、こちらも併せてご参照されることを推奨します。


なお、該当するレコード盤の現存数は少なく、また再生可能な機器も限られますが、かつては1分間に16回転という仕様のレコード盤も存在していました。当時を知る海老沢先生の解説を、下の動画でお楽しみください。

Ⅱ.レコード盤のサイズについて

レコード盤のサイズは、直径が7インチ(約17㎝)、10インチ(約25㎝)、12インチ(約30cm)の3つに概ね大別されます。過去には放送局用に16インチという更に大径の盤があり、これを再生するためのレコードプレーヤー(EMT R80/927シリーズなど)も存在しましたが、現代では12インチ盤が最も大きな盤として扱われ、ほぼ全てのレコードプレーヤーのプラッター(レコード盤を載せる回転盤部分)は12インチ盤までのサイズに対応しています。

この3種類のうち、7インチ盤は45回転のEP盤が多くを占め、10インチはSP盤と初期のLP(多くはモノラル)盤12インチはモノラル・ステレオを問わない33 1/3回転のLP盤か高音質な45回転盤に該当するケースが多い傾向にありますが、例外も多いため一概に括ることはできません。

Ⅲ.レコード盤のクリーニングについて

レコード盤面に付着したゴミやホコリは、ブラシなどで除去する

先にも述べた通り、レコード盤で音楽を再生する際はほぼ全てのケースでレコード盤面の音溝に直接カートリッジの針先(スタイラス)を触れさせて信号を読み取る、接触型の方式が用いられています。そのため、レコード盤面やその音溝、またカートリッジの針先にゴミやホコリなどが付着していると正確に信号を読み取ることができず、再生時にノイズなどを発生させる場合があります。

これを避けるため、レコード盤の表面とカートリッジのスタイラス先端は常に異物の付着が無い状態とする必要があります。

カーボンファイバーの毛先を持つレコードクリーナー、Ortofon Record brush

レコード盤表面をクリーニングする器具として、オルトフォンではカーボンファイバー製の毛先をもったRecord brushを商品化しています。これは横2列の毛先でレコード盤表面の汚れやホコリをキャッチし、同時に盤面に溜まった静電気を逃がすことも可能なものです。

そして、カートリッジ針先のクリーニングには製品に付属したブラシなどの使用を推奨しています。海老沢先生による解説もございますので、併せてお目通しください。



レコード盤について Vol.2 LPレコード編に続く

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