本ページでは、レコード針(カートリッジ)でピックアップした音声信号の再生に用いる、フォノイコライザーアンプおよびPHONO入力の概要・使用方法についてご紹介します。
最初にPHONO入力の概要を述べた後に、弊社公式YouTube動画も交えて具体的な内容をお伝えします。
PHONO(フォノ)入力は、レコード再生に対応したアンプやレシーバー、コンポなどにレコードプレーヤーを接続し、音楽再生を行うための端子です。つまり、このPHONO入力が設けられている機器=レコード再生に対応している機器(プレーヤーが一体となっている、または内蔵されている製品を除く)と理解することができます。
一般的なレコードプレーヤーをアンプなどに接続する場合は、このPHONO入力が設けられていることが不可欠です。なお例外としてレコードプレーヤー側にフォノイコライザーアンプが内蔵されている(Technics SL-1500Cなど)場合などに限り、レコードプレーヤーからの音声信号をアンプなどのライン入力に直結して再生することが可能です。
またPHONO入力端子へのケーブル接続時には、上の写真のようなフォノケーブルと呼ばれるレコードプレーヤーやトーンアームに接続することを想定したアース線付きのオーディオケーブルを使用するのが一般的です。基本的に、PHONO入力端子には端子近辺にアース線を接続する端子があります(例:下の写真)ので、ケーブル接続時にはアース線も接続しましょう。
なおPHONO入力が設けられておらず、RCA端子を用いた一般のライン入力のみの機器にレコードプレーヤーを接続する場合は、PHONO入力部分を単体で独立させたフォノイコライザーアンプ(後述)を使用することでレコード再生が可能となります。レコードプレーヤーをアンプなどの機器に接続する際は、その機器にPHONO入力端子が備えられているかを確認してみましょう。
アンプなどに内蔵されていたり、または単体製品となっているフォノイコライザーアンプには、RIAAカーブと呼ばれる(一般的には)固定のイコライザーカーブを音声信号にかけるための回路が搭載されています。このイコライザーカーブをかけることが、フォノイコライザーアンプの最も重要な役割です。
上図はRIAAカーブによってレコード盤に刻まれた音声信号がどの程度変化しているかを示したものです。イコライザーカーブが全くかけられていないフラットな状態の音声信号を図中央の緑の点線とした場合、レコードのカッティングのためにかけられるイコライザーカーブは赤線にあたります。高音域の音量が上がり、低音域の音量レベルが下げられていることが分かります。
それに対し、フォノイコライザーアンプの側ではその対称となるように青線の補正カーブをかけて同じだけ低音域を上げ、高音域を下げることで元のフラットな緑の点線に戻しています。
そのため、フォノイコライザーアンプやそれが搭載されたPHONO入力端子を通さずにレコードプレーヤーからの音声信号をアンプのライン入力等に接続すると、高音域だけが極端に強調されたシャリシャリという小さな音が聴こえることになります。このままでは実用に耐えませんので、レコード再生時は必ずフォノイコライザーアンプやPHONO入力端子を通すようにしましょう。
なお、一般的なステレオレコードや復刻されたモノラルレコードの多くはこのRIAAカーブを用いてカッティングされていますが、古いレコード(特にモノラルに多い)の中にはRIAAカーブの制定以前に存在した旧規格のイコライザーカーブが用いられているものも存在します。旧規格のカーブとRIAAカーブ、そして何故RIAAカーブが必要なのかについて、本邦におけるアナログ研究の第一人者である海老沢 徹 先生が解説しているのが下の動画です。あわせてお目通しください。
先述の通り、フォノイコライザーアンプの最も重要な役割はRIAAカーブなどのイコライザーカーブをレコード盤からの音声信号にかけ、通常の再生が可能な状態に戻すことです。これに加え、多くのフォノイコライザーアンプではCDプレーヤーなどと概ね同程度の音量になるように信号の音量増幅も行っています。
更に、狭義のフォノイコライザーアンプはMM型カートリッジの再生のみを前提としていますが、MC昇圧トランスやMCヘッドアンプを内蔵するなどしてMC型カートリッジの再生にも対応していたり、プレーヤー2台使用やダブルアームのプレーヤーにも対応させるために複数の入力系統を持っていたり、あるいはセレクターなどで様々な調整を行うことが可能な製品も存在します。
オルトフォンは、カートリッジメーカーとして自社製品に対してはもちろん、他の様々なカートリッジ(機種専用のアンプなどを必要としない、一般的構造のMC型やMM型)への対応も想定したフォノイコライザーアンプを製造しています。
そしてオルトフォンは今なお数多くのMC型カートリッジをラインナップしているため、現行モデルのフォノイコライザーアンプでは全ての製品でMC入力に対応(旧製品の一部に非対応あり)しています。MC/MMの切替は、接続端子の繋ぎ替えやセレクタースイッチの使用などで行うことが可能です。
なお、これらのフォノイコライザーアンプを通した音声信号は、プリもしくはプリメインアンプ接続時には一般のライン入力に接続する必要があります。PHONO入力ではありませんのでご注意ください。
EQA-2000は、オルトフォンが誇るフォノイコライザーアンプの新たなフラッグシップとして開発されたモデルです。
MC入力は2系統あり、いずれもXLR端子のバランス入力となっておりRCA端子のアンバランス入力はありません。そのため、本機のMC入力端子にトーンアームやプレーヤーからのケーブルを接続する際には6NX-TSW1010BのようにXLR端子を備えたバランス接続用のフォノケーブルが必要となります。
MMポジションの入力はバランスXLR1系統(MC昇圧トランスの接続を想定)、アンバランスRCA1系統です。オルトフォン製品を含む一般的なMMカートリッジは、アンバランスのRCA端子に接続してください。
なお、本機のバランスXLR入出力端子は全て2番ホットとなっています。またMC型カートリッジを上述製品のようにXLR端子を備えたケーブルで接続する場合、XLR端子の1番がグラウンド(アース)となっているためXLR端子を使用したバランス接続時に限り、アース線の接続は必要ありません。
様々な機能を備えた大型のフラッグシップEQA-2000に対し、単体フォノイコライザーアンプのエントリーモデルとしてラインナップされているのがEQA-444です。
本機はコンパクトながら高品位、ローノイズでシンプルなフォノアンプとなることを目指して開発されており、入出力はRCA端子の各1系統のみ、MC入力に対応しており、MM入力との切替は背面スイッチで容易に行うことが可能となっています。また近年主流となっている口径が太く重いケーブル端子に対して十分な強度を保持するため、精密で頑丈な切削加工のRCA端子を間隔を空けてレイアウトしています。
最後に、オルトフォン製品をご使用で、かつ本ページを読んで対応策を施しても状況が改善しない場合は、弊社お問い合わせフォームよりご質問下さい。担当者より折り返しご連絡させて頂きます。