ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2022.07.25
フォノ関連機器

フォノイコライザーについて Vol.1 基礎編

本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生時に使用するフォノイコライザーアンプについての概要をご紹介します。

PHONO入力についての基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「PHONO(フォノ)入力の役割と使用方法について」のお目通しをお勧めします。

Ⅰ.フォノイコライザーアンプとは

フォノイコライザーアンプは、前ページ「PHONO(フォノ)入力の役割と使用方法について」でも解説したとおりプリもしくはプリメインアンプなどのPHONO入力部分を独立させ、単独のアンプとしたものを指します。

様々な機能を搭載したフォノイコライザーアンプ、Ortofon EQAー2000

フォノイコライザーアンプの最も重要な役割は、レコード盤からピックアップして伝送されてきた音声信号に「RIAAカーブ」などに代表されるイコライザーカーブをかけ、通常再生が可能な状態に戻すことです。また多くのフォノイコライザーアンプではCDプレーヤーなどと概ね同程度の音量になるように信号の音量増幅も行っています。PHONO入力のないアンプや再生機器を使用していてレコード再生を行おうとする場合は、この単体製品のフォノイコライザーアンプが必要となります。

Ortofon EQA-2000 フォノイコライザーアンプに内蔵されている2種類のMC昇圧トランスユニット

更に、狭義のフォノイコライザーアンプはMM型もしくはそれに類するカートリッジの再生のみを前提としている機器ですが、MC昇圧トランスやMCヘッドアンプを内蔵するなどしてMC型カートリッジの再生にも対応していたり、プレーヤーの2台使用やダブルアームのプレーヤーにも対応させるために複数の入力系統を持っていたり、あるいはセレクターなどで様々な調整を行うことが可能な製品も存在します。これらの機能については、以下に詳しく解説してゆきます。


Ⅱ.MC入力対応製品を使用する際に注意すべきこと

MCヘッドアンプを内蔵したフォノイコライザーアンプ、Ortofon EQA-444


単体製品として設計されているフォノイコライザーアンプには、先に述べたようにMCカートリッジの再生も可能となっているものが多数存在します。上に挙げたEQA-444のようにMCとMMのポジションを切り替える機能と電源スイッチだけを備えたフォノイコライザーアンプであれば使用カートリッジがMCかMMかを意識するのみで構いませんが、ハイエンド製品になるほど様々な機能が備えられ、細かな調整が可能となる傾向にあります。

この場合、特に意識すべき点は使用しているMC対応のフォノイコライザーアンプがインピーダンス調整可能であるか、さらにMC昇圧トランスとMCヘッドアンプのどちらが内蔵されているかです。

切替スイッチなどでフォノイコライザーアンプ側のインピーダンス調整が可能な場合、使用しているMCカートリッジの公表スペック値を確認した上で適正値に合わせることが理想です。しかし、フォノイコライザーアンプにMC昇圧トランスが内蔵されているか、もしくはMCヘッドアンプが内蔵されているかで参照すべきカートリッジのスペック項目が異なるため、両者の違いを理解した上で使用している製品にどちらが搭載されているかを把握しておく必要があります。

なお、MC昇圧トランスとMCヘッドアンプの違いについては別項「MCカートリッジの昇圧・音量増幅の方法について」にて詳細に解説しておりますので、あわせてお目通しください。


Ⅲ.フォノイコライザーアンプ関連の用語解説

ここでは、インピーダンスやその他機能の調整が可能なフォノイコライザーアンプやPHONO入力対応のアンプを操作する際に理解しておくべき用語のうち、代表的なものを挙げて解説します。用語の呼称はオルトフォンで使用している表記で解説しているため、他社表記とは一部異なる場合があります。

また下記の用語は、フォノイコライザーアンプやPHONO入力対応のアンプとMCもしくはMM型のカートリッジを併用する際を想定した記述となっています。MCもしくはMM型以外の、内部構造が全く異なるカートリッジを使用する際はその製品に対応した機器が必要となる場合がありますのでご注意ください。

なお、インピーダンスそのものについては別項「カートリッジについて Vol.16 インピーダンス編」にて詳細に解説しておりますので、あわせてお目通しください。


①内部インピーダンス(英:Internal impedance)

MC型カートリッジの内部構造図

オルトフォンでは、MC型カートリッジ内部コイルのインピーダンス「内部インピーダンス」と呼称しています。

この数値はMC型カートリッジを使用しており、かつMC昇圧トランスに接続する際に参考とすべき値です。MM型カートリッジ使用時やMCヘッドアンプ使用時に参照する必要は基本的にありません。

MC昇圧トランスの機種によっては、対応インピーダンス(後述)が可変式であったり、逆にその範囲が狭く決まっている場合があります。使用するMCカートリッジの内部インピーダンスと、接続先となる昇圧トランスの対応インピーダンス値が範囲内か、もしくはある程度マッチしていることが望ましいです。なお、これらのマッチングが取れていなかったとしてもカートリッジや昇圧トランス、再生機器が壊れることはありません。

また、MCカートリッジを分類する際には「ロー・インピーダンス」「ハイ・インピーダンス」という区分方法がありますが、これはこの内部インピーダンスの高低を指しています。オルトフォンのMCカートリッジは、一部例外はありますが内部インピーダンス2~10Ω程度の「ロー・インピーダンス」に属しているものがほとんどです。


②対応インピーダンス(英:Recommended cartridge impedance)

内蔵MC昇圧トランスの切替セレクターノブ(右)を備えた、Ortofon EQA-2000


対応インピーダンスは、先に述べたMCカートリッジの内部インピーダンスに対し、MC昇圧トランス側で合わせるべき値を指します。MM型カートリッジ使用時やMCヘッドアンプ使用時に参照する必要はありません。

上の写真にあるEQA-2000のセレクターを切替方法の例として述べると、内部インピーダンス3ΩのMCカートリッジを接続している場合は「MC 1b(~10Ω)」を選択する必要があります。それに対し、内部インピーダンスが40ΩのMCカートリッジの場合は「MC 1a(5-50Ω)」を選択する必要があります。なお「MC 2(2-60Ω)」は、3Ωも40Ωもどちらも使用可能です。

この対応インピーダンスの値と範囲は機種によって様々につき、MC昇圧トランスを使用する際は接続するMCカートリッジの内部インピーダンスを確認し、昇圧トランスの対応インピーダンスがそれに近いか範囲内であることを確認しましょう。そして繰り返しとなりますが、オルトフォンのMCカートリッジはほぼ全てが内部インピーダンス10Ω以下のローインピーダンスに属します。

また、使用しているMCカートリッジの内部インピーダンスと昇圧トランスの対応インピーダンスが厳密に合致しない場合(例:内部インピーダンス7Ωに対し対応インピーダンスの値が3Ωと10Ωの場合など)は、MCカートリッジの内部インピーダンス値に近い値を選択することを推奨します。ただ、マッチングが取れていないとしても機器が破損することはないため、好みの音色となるポジションに合わせてしまっても特に問題はありません。

MC昇圧トランスを内蔵した、Ortofon EQA-2000のMC入力端子


③推奨負荷インピーダンス

①で述べた内部インピーダンスと異なり、MCヘッドアンプ時に参照すべき値が「推奨負荷インピーダンス」です。また、この言葉はMCカートリッジが接続された先のフォノイコライザーアンプ側でセレクトしておくことが推奨される負荷インピーダンス値という意味をもっています。繰り返しとなりますが、MC昇圧トランス使用時は内部インピーダンスMCヘッドアンプ使用時は推奨負荷インピーダンスです。

オルトフォンに推奨負荷インピーダンスの切替が可能な製品はありませんが、他社製品には推奨負荷インピーダンスの切替を可能とした単体製品としてのMCヘッドアンプ、もしくはヘッドアンプ内蔵のフォノイコライザーアンプが存在します。こういった製品にMCカートリッジを接続する場合は、カートリッジ側の推奨値と機器側のセレクターポジションをなるべく合わせるようにしましょう。

なお、この値はあくまで「推奨」値につき、それぞれがマッチしていない場合でも機器が破損することはありません。


④推奨負荷抵抗(Recommended load resistance)

上述③の推奨負荷インピーダンスと概要はほぼ一緒ですが、MM型カートリッジのスペックを示す際は「推奨負荷抵抗」という表記で区別されることがあります。その理由については別項「カートリッジについて Vol.16 インピーダンス編」にて詳細に解説しておりますので、あわせてお目通しください。

なお、フォノイコライザーアンプやPHONO入力側の負荷抵抗値は国際規格(任意、強制力なし)で基準として定められた47kΩに合わせている例が多数を占めます。オルトフォン製品もこれに則っていますが、これが可変となっている製品を使用している場合はMMカートリッジの推奨負荷抵抗値に合わせたり、あるいは好みに合わせて変更してみましょう。この値はあくまで「推奨」値につき、それぞれがマッチしていない場合でも機器が破損することはありません。


⑤サブソニック・フィルター

人間の可聴周波数帯域のうち、低音域側は20Hz程度までといわれています。これよりも低い、超低音域の周波数で発生するノイズをサブソニック・ノイズと呼びます。

このノイズはレコードの反りや再生環境などに起因して発生する可能性があり、その場合にはスピーカーの振動板(特に高性能な大口径ウーファーのコーン紙など)を不必要に動作させ、ひどい場合にはウーファーユニットを傷める恐れがあります。超低音域の再生能力をもたない機器を使用する際は必要ありませんが、高性能なアンプやスピーカーでは再生ができてしまいノイズとして感知できたり、振動板のふらつきが視認できてしまう場合もあります。このような場合はサブソニック・フィルターをONとし、スピーカーの保護を行う必要があります。

なお、全ての環境下でサブソニック・ノイズが発生する訳ではありませんので先に述べたような具体的症状がみられない場合は、OFFとしていても問題はありません。

Ortofon EQA-2000背面に備えられたサブソニック・フィルター


フォノイコライザーについて Vol.2へ続く

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