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アナログオーディオ大全

2022.08.22
フォノ関連機器

フォノイコライザーについて Vol.4 RIAAカーブ編 Ⅲ

本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生用のフォノイコライザーアンプに使用されているイコライザーカーブ、RIAAカーブについて前項に引き続きご紹介します。

基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「フォノイコライザーについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

※本項は、RIAAカーブに関する内容についての基礎的な解説を行うものです。RIAAカーブ制定以前のイコライザーカーブは多岐にわたり、またRIAAカーブ制定以降の長い歴史の中には様々な例外や特殊な事例が存在していますが、これらは本項で扱う内容を超えた専門的な事項となるため割愛し、基礎・原則に絞った解説を行っています。


Ⅰ.RIAAカーブのはたらきについて

前項までの解説で、カッターヘッドやMC(およびMM)型のカートリッジが速度比例型の構造をもつことや、その動作原理と特徴についての理解が深まったことと思います。そしてレコードカッティング側の終端となるカッターヘッドと、プレイバック側の始点となるカートリッジはともに速度比例型であるため、これに用いるフォノイコライザーアンプのイコライザーカーブは必然的に速度比例型の使用を想定し、その特性に合わせたものとなります。

図1:RIAAカーブの模式図

上に示しているのは、前項でも解説したイコライザーカーブの代表例「RIAAカーブ」の模式図です。RIAAカーブがかかっていない、周波数の特性がフラット(図1・緑の点線)である状態の音声信号は、低音域ほどレベルが高い(音量が大きい)ままであるのに対し、高音域になるほど減衰してレベルが低く(音量が小さく)なる傾向にあります。

図2:RIAAカーブによる補正のない、録音時そのままの音声信号レベルを示した模式図

この信号をそのままレコード盤にカッティングしたものと仮定して、音溝上に現された信号を模式的に表したものが上図です。音量レベルが大きな低音域の信号(図2・黒の波線)に対し、減衰した状態となっている高音域の信号(図2・赤の波線)はレベルが小さくなっており黒・赤の2つの信号に大きなレベル差が発生しています。更に上図を見ると分かるように、音量レベルの大きな低音域の信号は左右チャンネルの「録音・再生の限界幅」を超えてグレーカラーの超過帯に突入しています。このままではカッターヘッドによるカッティングは非常に難しく、また一般的なカートリッジは針先がこの大振幅をトレースできずに針飛びを起こしてしまうため、低音域の音量レベルを下げて限界幅の間に収めてやる必要があります。

その一方で、レコード盤の再生時に音溝表面とカートリッジのスタイラスチップ表面が接触することで発生する「サー」というノイズは高い周波数帯で出現することが多いため、高音域の音量レベルが小さいままカッティングを行ってしまうと再生時に音溝表面とスタイラスチップが触れてノイズが発生した際、高周波数帯の音量レベルが小さなままでは音声信号がノイズに埋もれ、これを再生すると78回転のSP盤再生時のように針先の接触音が目立つことが考えられます。これを避けるためには、高音域の音量レベルを上げてノイズを音量の大きな信号の下に埋めてしまい、(結果的には)再生時にノイズを目立たなくする必要があります。

RIAAカーブの最も重要な役目は、このような低・高それぞれの周波数帯において発生する問題を同時に解決するため、ラッカー盤カッティングの前段階で音声信号にイコライザーカーブ(先の図1に示した赤線をかけ、高音域の音量レベルを大きく、逆に低音域の音量レベルを下げて対処することにあります。

図3:RIAAカーブによる補正を行って、音溝の幅にレベルを合わせた音声信号の模式図

本来は図2の状態であった音声信号に、先に示した図1の赤線に該当するイコライザーカーブをかけた状態を模式的に示しているのが上の図3です。実際の変化が全てこの通りとなるとは限りませんが、高音域のレベルが上がり、低音域は「録音・再生の限界幅」に収められていることが分かります。

カッターヘッドがレコード盤に音溝を刻む際は、既にイコライザーカーブがかかった図3の状態となっています。この音溝を速度比例型のカートリッジでピックアップすると、レコード盤面に物理的に刻まれていた音声は再び電気信号へと変換されます。しかし、図3の状態の信号をこのまま音声として再生すると極端にハイ上がりとなってしまうため、元のフラット状態(図1・緑点線)に戻すために今度は図1の青線に該当する逆特性の補正カーブをかけ、音声信号を図2の状態に戻す必要があります。繰り返しとなりますが、この図1の青線をかけ、信号を図2の状態に戻すことが、フォノイコライザーアンプやこれを内蔵したPHONO入力端子の最も重要で基本的な役目となります。

ここまでの解説を読んだ上で、海老沢先生がRIAAカーブについて解説しているYouTube動画を再度見てみましょう。先生の解説している内容が、「フォノイコライザーについて Vol.2 RIAAカーブ編 Ⅰ」時点に比べてより明快に理解できるのではないでしょうか。

Ⅱ.「RIAA」とは何か

ここまで3回にわたってRIAAカーブの役割についてを述べたところで、最後に「RIAA」とは何かを解説します。

RIAARecording Industry Association of Americaの頭文字を取ったもので、日本語では「アメリカレコード協会」や「全米レコード協会」とも訳される米国の業界団体です。ステレオレコード実用化よりも前の1952年にレコード技術の規格化を目的として設立され、当時レコード会社ごとに分かれていて統一されていなかったイコライザーカーブの特性を制定して推奨する役目を果たしたため、協会の名を取ってRIAAカーブと呼ばれるようになりました。

モノラル時代のレコード盤はRIAAカーブの制定前にカッティングされたものも多いため、イコライザーの特性がRIAAカーブとは異なる場合もあります。しかしステレオレコードの実用化時には既に規格として存在していたため、例外はありますがステレオ盤のイコライザー特性は概ねRIAAカーブであると考えても差し支えありません。

RIAAカーブについての解説は本項をもって一旦終了とし、次項「フォノイコライザーについて Vol.5」ではフォノ入出力のバランス伝送について述べます。

フォノイコライザーについて Vol.5に続く

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