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アナログオーディオ大全

2022.08.01
フォノ関連機器

フォノイコライザーについて Vol.2 RIAAカーブ編 Ⅰ

本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生用のフォノイコライザーアンプに使用されているイコライザーカーブ、RIAAカーブについてご紹介します。

基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「フォノイコライザーについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

※本項は、RIAAカーブに関する内容についての基礎的な解説を行うものです。RIAAカーブ制定以前のイコライザーカーブは多岐にわたり、またRIAAカーブ制定以降の長い歴史の中には様々な例外や特殊な事例が存在していますが、これらは本項で扱う内容を超えた専門的な事項となるため割愛し、基礎・原則に絞った解説を行っています。


Ⅰ.RIAAカーブとは

通常、一体型ではないレコードプレーヤーとアンプ、スピーカーなどを使用してレコードを聴く際は、レコードプレーヤー(MCもしくはMM型、あるいはそれに類するカートリッジを使用し、フォノイコライザー非搭載のもの)からの音声信号はアンプのPHONO入力端子や単体製品のフォノイコライザーアンプに一旦通した上でアンプのライン入力に接続する必要があります。

その理由は、レコード盤の音溝に刻まれた音声信号の多くには高音域の音量を大きく、低音域の音量を小さくした一種の信号補正フィルタがかけられているためで、この場合はPHONO入力やフォノイコライザーアンプを通すことで初めて本来の音色になります。この補正レベルを表で示した際に現れる曲線をイコライザーカーブと呼び、その代表的なものに「RIAAカーブ」があります。

そのため、PHONO入力端子やフォノイコライザーアンプを通さずにレコードプレーヤーからの音声信号をアンプのライン入力等に直結した場合、高音域だけが極端に強調されたシャリシャリという音が聴こえることになります。このままでは実用に耐えないため、MCもしくはMM型などのカートリッジによるレコード再生時は必ずPHONO入力端子やフォノイコライザーアンプを通すようにしましょう。アンプなどに内蔵されていたり、または単体製品となっているフォノイコライザーアンプには、カートリッジがピックアップした音声信号にRIAAカーブをかけるための回路が搭載されています。このカーブをかけることが、フォノイコライザーアンプの最も重要な役割です。

MCカートリッジの接続に対応するため、MC昇圧トランスやMCヘッドアンプなどを内蔵している製品もありますが、この機能は狭義の「フォノイコライザー」の役割には含まれません。

また、下に示した「RIAAカーブの模式図」ではレコード盤に刻まれた音声信号がRIAAカーブによってどの程度変化しているかを示しています。この模式図に現されたカーブの解説と、使用される順序を以下に述べてゆきます。

・図中央の緑の点線イコライザーカーブが全くかけられていないフラットな状態の音声信号

・高音域の音量が上がり、低音域の音量レベルが下げられている赤線コード盤のカッティングのためにかけられるイコライザーカーブ

赤線の対称となるよう、低音域を上げ、高音域を下げている青線:フォノイコライザーアンプ側の補正カーブ。これを通すことで赤線は元のフラットな緑の点線に戻る

本来は緑の点線位置にある音声信号は、レコード盤に刻むために赤線のカーブをかけられ、カートリッジのピックアップ後に青線の補正カーブが再びかかり、元のフラットな緑の点線に戻ります。

これが一般的なレコード再生時における順序となりますので、覚えておきましょう。

そして一般的なステレオレコードや復刻されたモノラルレコードの多くはこのRIAAカーブを用いてカッティングされていますが、古いレコード(特にモノラルに多い)の中にはRIAAカーブの制定以前に存在した旧規格のイコライザーカーブが用いられているものも存在します。旧規格のカーブとRIAAカーブ、そして何故RIAAカーブが必要なのかについて、本邦におけるアナログ研究の第一人者である海老沢 徹 先生が解説しているのが下の動画です。あわせてお目通しください。

Ⅱ.「速度比例型」のカートリッジについて

先の動画ではRIAAカーブやそれを用いたフォノイコライザーアンプが必要となる理由について述べられていますが、その中に「速度比例型」のカートリッジについて海老沢先生が言及している場面があります。

MC型カートリッジの代表例、SPUの振動系部分を拡大表示した図

この速度比例型は、動画の解説字幕にもある通りカートリッジの振動系部分(特に針先)の振動速度が速い、つまり再生周波数が高いほどカートリッジの出力電圧が上がる型式のことを指します。

これは一般的なMC型やMM型など、オルトフォンが生産している全てのカートリッジが該当します。本項では、この速度比例型のカートリッジの仕組みについても詳しく解説します。

レコード盤上に刻まれた音声信号を模式的に示した図

上の図は、レコード盤の表面に極めて単純な2種類の音声信号を音溝(グルーヴ)として刻んだ様子を模式的に示したものです。実際の音声信号は上図の波とは比較できないほどに複雑ですが、高周波数(高い音)の信号を赤低周波数(低い音)の信号を黒で示しています。そして「録音・再生の限界幅」と記された幅はカッティングマシンのカッターヘッドや再生側のカートリッジが追従していける限界幅を示しています。実際にカートリッジがこの音溝をトレースする際は、この黒や赤の波形に沿って図の「→針先進行方向」に向かって針先が進んでいくと想像して下さい。

ここまでを理解した上でもう一度図を見ると、赤線の高周波数の信号黒線の低周波数の信号とでは波の幅に大きな差がみられることが分かります。オシロスコープや音声編集ソフトなどで画面上に表示される波形も全く一緒ですが、音声信号は周波数が上がるほど左右方向の波形の間隔(振幅)が狭くなり、周波数が下がるほど左右方向の波形の間隔が広くなります。そして音量が大きいほど、上下幅が大きくなります。

こうして見ると、音声信号の周波数が高いとき低いときでは盤面上では同じ距離でも、カートリッジの針先が左右に動くスピードが全く異なることが想像できるでしょう。高周波数の赤い線をトレースした際は狭い振幅に合わせて(進行方向から見て)左右方向に高速で振れながら進むのに対し、低周波数の黒い線の場合は(進行方向から見て)左右方向への振れは非常に緩やかになります。

速度比例型カートリッジの動作原理は、手回し発電機と同一

動系部分にコイルやマグネットを搭載し、電磁石の動作によって発電するタイプであるMCやMM型のカートリッジでこの溝をトレースすると、周波数が高くなるほど針先の運動量が増え、カンチレバーの動きも速くなります。そうすると、これらのカートリッジは針先の動く速度に比例して出力電圧が高く(音量が大きく)なります。手回し発電機を速く回すと、接続されている電球がより輝くのと全く同じ原理です。

速度比例型であるMC型(左)とMM型(右)の動作原理を示した模式図

そのため、MC型やMM型、もしくはそれに類する方式のカートリッジは「速度比例型」と呼称されています。

速度比例型のカートリッジは、静電型、光電型などの振幅比例型のカートリッジとは動作上の互換性がありません。また、基本的に(圧電型を除く)静電型や光電型のカートリッジは専用のアンプや電源装置を必要とするものが多く、このような機種の場合はRIAAカーブを使用し、速度比例型のカートリッジの接続を前提とした一般的なフォノイコライザーアンプで再生することは不可能です。

本項では、「RIAAカーブ」「速度比例型」カートリッジとは何か、という基礎的な内容について解説しました。次項以降では「速度比例型」についてさらに詳しく踏み込むとともに、レコードの音溝を刻むカッターヘッドについてもあわせて解説してゆきます。

フォノイコライザーについて Vol.3 RIAAカーブ編 Ⅱに続く

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