ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2023.09.25
アクセサリー

ストロボスコープとその使用方法について

本ページではレコード針(カートリッジ)の再生を行うレコードプレーヤーの回転数を確認するための、ストロボスコープについてご紹介します。

最初にストロボスコープの概要を述べた後に、弊社公式YouTube動画も交えて具体的な取付方法をお伝えします。

Ⅰ.ストロボスコープとは

ストロボスコープは、一定のスピードで回転する物体に同じく一定の間隔で点滅するライトを照射し、その回転数を測るための装置です。レコード再生においては、レコードプレーヤーの回転数を目視で確認したり回転速度の調整を行う際に必要となる機構で、かつては放送局やレコード会社などで用いられる高精度な業務用プレーヤーに標準装備として採用されていました。

1970年代前半頃までに開発されたレコードプレーヤーでは、プラッター(レコード盤を載せる回転盤部分)の側面に4パターンほどの縞模様が施され、その対となるキャビネットにはネオン管が組み込まれたライトが装備(オプションとして追加するタイプの機種もあり)され、電源ONとともに点灯する仕様を備えているものが多くみられます。この頃までのプレーヤーはクオーツロックによる高精度な回転の制御機構を備えていなかったため、再生時に度々回転数を微調整する必要がありました。故にその指標となるストロボスコープは必需品で、高級機種を中心に多くのプレーヤーに備えられていました。

Technics SL-1200シリーズのターンテーブル外周にある縞模様は、ストロボスコープの名残

代表的な例としては、Technics SL-1200シリーズが挙げられます。初代モデルはクオーツロック制御を搭載していないため、プラッター側面に配された円形の縞模様は実際にストロボとして使用されていました。またキャビネットには小型のピッチコントロール用ダイヤルが備えられ、これを回しながらネオンランプに照らされたプラッター側面を見ることで回転数の微調整を行うことができました。その後のモデルチェンジにより、SL-1200シリーズはクオーツロック制御を搭載したため再生中の微調整は不要となり、プラッター側面の縞模様とキャビネットのネオンランプ、ピッチコントロール機能は本来の役目を終えています。

この流れはSL-1200シリーズに限らず、1970年代後半~1980年代前半頃に発売されていたプレーヤーでは高精度かつ簡便という利点によりクオーツロック制御、かつダイレクトドライブ方式の製品が主流を占めていました。このタイプのプレーヤーは、セッティング方法のミスや機構部分の故障がない限りは再生中に回転数が変化することはないため、ストロボスコープやピッチコントロールでの回転数調整を必要としません。

ただ、業務用途の一種ともいえるDJ用途ではピッチコントロールが重要な機能として使用され続けました。クラブハウスなどで使用されることが一般的であったこともあり、暗所でも回転ピッチを視認することが可能なプラッター側面の縞模様とライトもあわせて引き続き製品の仕様として残り続け、今日では同シリーズやDJ用ターンテーブルのアイコンにもなっています。

ベルトドライブ方式のレコードプレーヤー、独Acoustic Solid社 Solid Edition

なお、近年のHi-Fi用途のレコードプレーヤーは嗜好の多様化によりベルトドライブや(一部では)アイドラードライブ方式のものも再び増加傾向にあります。このようなプレーヤーはモーターの回転をプラッターに伝達させるベルトや糸のコンディションや張り具合などで回転数が変化する上、デザイン面や機構上の制約からストロボスコープを装備していないものも多くあります。

上の写真に挙げたSolid Editionはこういったプレーヤーの一例で、使用時には時折回転状態の確認を行うことが理想的です。

これを鑑み、オルトフォンでは高精度なストロボ盤とストロボライトをセットにしたストロボスコープ、SB-2を発売しています。ヴィンテージプレーヤーの回転数調整にはもちろん、最新のベルトドライブプレーヤーの動作確認にも最適な製品です。


Ⅱ.ストロボ盤について

Ortofon SB-2に付属しているストロボ盤

ストロボスコープは、上の写真で挙げたもののように縞模様が刻まれたストロボ盤と、特定周波数に同期させた状態で動作するストロボライトから構成されています。製品によってはストロボ盤単体で販売されているものもありますが、その際はオーディオシステムを設置した部屋の照明がインバーターなしの蛍光灯であること条件となります。

そして多くの場合、ストロボ盤にはレコード盤の回転数に合わせて33 1/3、45、78回転の3種類の縞が刻まれています。上の写真に挙げたオルトフォンのSB-2に付属しているストロボ盤では、最外周が33 1/3回転、中間に45回転、最内周に78回転用の縞が配置されています。

また、日本は新潟県の糸魚川と静岡県の富士川付近を境界として電源周波数が分かれています。境界から東側は50Hz、西側は60Hzで、境界付近では50Hzと60Hzの地域が混在しています。オーディオ機器が設置された場所の電源周波数によってストロボの縞の刻み方が変わるため、SB-2付属のストロボ盤にも50Hz用の●型、60Hz用の■型の2パターンが備えられています。蛍光灯で回転数を確認する際は、機器が設置された地域の電源周波数に合わせて50Hz用の縞と60Hz用の縞を使い分ける必要があります。

Ortofon SB-2のストロボライトは、常に60Hzでの照射を行っている

なお、SB-2付属のストロボライトは常に60Hzの周波数を出力しています。これは50Hzに比べ60Hzの方が周波数の振幅が狭く、より高精度な計測が可能なためです。このため、SB-2のストロボ盤も60Hzを幅広の縞で表示しています。ちなみにSB-2の付属ライトは乾電池駆動のため、地域によって周波数を切り替える必要はありません。


Ⅲ.ストロボスコープ使用時の注意点

ストロボスコープの使用に際しては、いくつかの注意点があります。下記内容を十分に理解の上で使用されることを推奨します。

・注意点①

オーディオシステムが設置された部屋の照明灯でストロボ盤を直読する場合は、照明灯が『蛍光灯』である必要があります。窓から差し込む日光や白熱電球、インバーター式の蛍光灯やLED式証明などではストロボ盤を見ても電源周波数との同期を認識できないため、使用前に照明灯の種類を確認して下さい。蛍光灯以外の照明器具を使用している場合は、ストロボライトが付属したストロボスコープの使用を推奨します。また同様に、ストロボライトも電源と同期もしくは同様の波形を出力している必要があります。一般の懐中電灯やペンライト、スマートフォンなどのライト(50もしくは60Hzの周波数と同期しているものを除く)では用をなしません。

・注意点②

ストロボライトを使用する際の注意点として重要なのが、電池残量についてです。ライト内部に装着した電池(Ortofon SB-2の場合、単4型乾電池)の残量が減り、所定の電圧を維持できなくなるとライトが正確な電源周波数を照射できず、回転数が合わないという事態が発生する可能性があります。また、ライトを照射したまま放置すると電池の減りも速くなりますので、回転数の確認を行わない際は小まめにライトを消灯しましょう。

Ⅳ.ストロボスコープの使用方法

ここでは、Ortofon SB-2を例としてストロボ盤にストロボライトが付属したストロボスコープの使用方法を解説します。その他の製品については、それぞれの取扱説明書を一読の上で参考に留めてください。

・手順①

ストロボ盤をレコードプレーヤーのセンタースピンドルに挿し、プレーヤーを回転させる。

・手順②

ストロボライトを照射させ、プレーヤーが回転している回転数に対応したストロボ盤の縞を読み取る。

・手順③

回転数が合っている場合は、縞が定位置に静止して見える(電源環境やプレーヤーのコンディションなどによって微細なブレが発生する場合もあり)。

回転数が合っていない場合は、縞が左右の一方向に流れる。また縞が前後に動く場合はワウ・フラッターが大きくなっていることが読み取れる。いずれの場合もレコードプレーヤーの回転数調整やメンテナンスが必要であり、調整などの対応を行った後に再び手順①~②を試す。

上記手順を更に詳細に紹介しているのが、下に挙げた弊社公式YouTube動画です。上記手順を一読の上、下の動画もあわせて確認されることをお勧めします。


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