ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2022.06.16
トーンアーム

トーンアームの調整方法について

本ページでは、トーンアームの調整方法についてご紹介します。

最初にトーンアームの概要を述べた後に、弊社公式YouTube動画も交えて具体的な取付方法をお伝えします。

トーンアームとは

トーンアームは、レコード針(カートリッジ)を先端に取り付け、カートリッジがレコード盤の音溝(グルーヴ)をトレースできるよう固定しつつ適切な方向に駆動させる役目を持った腕木状の機器です。音楽(再生)に用いる腕木なので、トーンアームと呼びます。

ユニバーサル型トーンアームの各部名称

上図は一般的なトーンアームの各部名称を示したものです。このうち、アームパイプ先端にヘッドシェルを固定するヘッドシェルコネクター、アームパイプを上下に動かすアームリフター、針圧やバランスの調整に用いるカウンターウェイト(メインウェイト、単にウェイトなどとも称する)の3つは、レコード再生やカートリッジの交換などで頻繁に使用する重要なパーツにつき、下記でそれぞれの役割について説明します。


・ヘッドシェルコネクター

ユニバーサル型トーンアームのヘッドコネクタ

ユニバーサル型と呼ばれるタイプのトーンアームには、パイプ先端にヘッドシェル脱着用のコネクターが取り付けられています。これはヘッドシェルコネクターと呼称されており、凹凸や溝が刻まれた外周部分を回転させることでヘッドシェルを脱着させることが可能です。なお、近年増加しているヘッドシェル一体型トーンアーム(下の写真)にはこのコネクターはありません。

ヘッドシェル一体型トーンアームの例

・アームリフター

アームリフターの機構と動作図

現代の多くのトーンアームには、レコード再生開始・終了時にアームのパイプを昇降させるためのアームリフターが備えられています。リフターレバーの昇降に連動してリフターが上下に動作する構造は、多くのアームリフターに共通しています。なお、レコード再生時の針の上げ下ろしはアームリフターを使用せずとも可能ですが、手元が狂う、滑る、針先の視認が困難などの原因による針先(特にカンチレバー)の破損が多発しています。そのため、カートリッジの昇降時には可能な限りアームリフターを使用して下さい。


・カウンターウェイト(メインウェイト)

トーンアームのバランスウェイト

トーンアームのカウンターウェイトは、アームの水平バランスであるゼロバランスの調整や針圧の加圧などに使用するパーツです。多くの場合、ウェイトの先端には目盛のふられたリング状の文字盤が取り付けられています。その場合は、この文字盤を使用してゼロバランスや針圧の調整を行います。また多くの場合、このバランスウェイトはトーンアーム各機種専用に設計されています。重量バランスやウェイトのシャフト径などが異なるため、カウンターウェイトは必ず各アーム純正のものを使用して下さい


トーンアームの基本的な構造と針圧加圧方式

トーンアームは、針圧の加圧(針圧をかける)方法によって概ね2つに大別されます。基本的にはスタティック・バランス型ダイナミック・バランス型に分けられますが、一部製品の中にはスタティック/ダイナミック両方の加圧方式を行うことが可能なものもあります。

スタティック・バランス型の構造と針圧の加圧方式

上図はスタティック・バランス型トーンアームの構造を示したものです。トーンアームが取り付けられた状態で販売されているプレーヤーシステムにはほぼこの方式のアームが取り付けられており、カウンターウェイト(メインウェイト)のみでゼロバランスと針圧の調整が可能な、使いやすい方式です。

スタティック・バランス型の例、Technics SL-1200シリーズ付属アーム
スタティック・バランス型トーンアーム、Ortofon AS-212R/309R

ダイナミック・バランス型の構造と針圧の加圧方式

上図はダイナミック・バランス型トーンアームの構造を示したものです。バランスウェイト(メインウェイト)はアームの水平バランス(ゼロバランス)のみを受け持ち、針圧の加圧はスプリングで行う方式です。再生時の安定感に優れますが機構が複雑なため、多くの場合は単売トーンアームなどの上位グレード製品や放送局などで使用する業務用機器に使用されます。

ダイナミック・バランス型トーンアーム、Ortofon RMG-309(生産完了)
ダイナミック/スタティックハイブリッド型トーンアーム、Ortofon RSG-309(生産完了)

また、下の動画はアナログ研究の第一人者である海老沢 徹 先生が、トーンアームの構造とカートリッジとの相性について解説しているものです。本項に書かれた内容についても詳しく述べられておりますので、あわせてご参照ください。


トーンアームの調整方法

トーンアームの調整は、必ずお手持ちのレコードプレーヤーおよび単売トーンアームの取扱説明書を熟読し、内容や注意点を十分に理解した上で行いましょう。

トーンアームは基本的な構造こそ多くの機種で類似していますが、各メーカー、または各機種特有の仕様や構造も非常に多い製品です。安易な操作や、取扱説明書の注意に沿わない独自の解釈のままアームのセッティングや再生を行うと、アーム本体だけでなくカートリッジやレコード盤、場合によってはアンプやスピーカーを破損する場合もあります。

またトーンアームはその機構上、非常に精密な専用部品を多数使用しています。過剰な力がかかったり、取扱説明書に記された範囲を超えた使用を行うと破損する場合があり、それに伴って部品交換や再組立を伴う修理を行うと修理費用が高額となる恐れがあります。特に旧製品のトーンアームの場合、既に販売元やメーカーの修理が不可能な製品もあります。安易な分解や改造を行うと修理不可能となる可能性が高いため、十分にご注意ください。

ここでは最初に、最も一般的なレコードプレーヤーと思われるTechnics SL-1200シリーズとそのトーンアームの調整方法を紹介します。このトーンアームはスタティック・バランス型につき、調整方法もスタンダードな手順となります。

なお、SL-1200シリーズのトーンアームは使用するカートリッジの重量に合わせ、アーム後端に追加の補助ウェイトを取り付けることで様々なカートリッジに対応することが可能となります。下の動画は、カートリッジの中でも非常に重いSPUを取り付ける方法を紹介しているものです。一例としてお目通しください。


そして下の動画は、海老沢先生がトーンアームやカートリッジをセッティングする際の基準について解説しているものです。本項でここまでに述べた内容を更に深掘りしたお話となっておりますので、併せてご参照ください。

また、レコードプレーヤー据え付けではなく単体で販売されているトーンアームは、セッティングの際はプレーヤーにアームを取り付ける作業から行う必要があります。そしてトーンアームの取付やセッティング方法は、同一メーカー製品でも共通ではない場合があります。その例として、オルトフォンのスタティック・バランス型であるAS-212S、ダイナミック・バランス型のRS-212D、両者ハイブリッドのRSG-309を挙げます。それぞれの動画をお目通しの上、各製品の特徴やセッティングの注意点などの参考となれば幸いです。


スタティック・バランス型トーンアームの取付とセッティング方法(例:Ortofon AS-212S)

ダイナミック・バランス型トーンアームの取付とセッティング方法(例:Ortofon RS-212D)

スタティック/ダイナミックのハイブリッド型トーンアームの取付とセッティング方法(例:Ortofon RSG-309)


最後に、オルトフォン製品をご使用で、かつ本ページを読んでも不明点がある場合は、弊社お問い合わせフォームよりご質問下さい。担当者より折り返しご連絡させて頂きます。


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