ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2023.02.20
トーンアーム

トーンアームについて Vol.5 RMG・RMAシリーズ編

本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生時に使用するトーンアームのうち、オルトフォンの「RMG・RMAシリーズ」についての解説を行います。トーンアーム調整方法について重点的に扱っていたり、基礎的な内容について解説したページもございますので、先に「トーンアームの調整方法について」および「トーンアームについて Vol.1 基礎編Ⅰ」「トーンアームについて Vol.2 基礎編Ⅱ」、またダイナミック・バランス型トーンアームについて解説した「トーンアームについて Vol.4 ダイナミック・バランス編」のお目通しをお勧めします。

Ⅰ.SPUの半身、RMG/RMAシリーズ

Ortofon RMG-309(生産完了)

オルトフォンのダイナミック・バランス型トーンアームについては前項で述べたとおりですが、本項ではその中で未解説であったRMG/RMAシリーズのトーンアームについて解説します。

RMG/RMAシリーズのトーンアームは、オルトフォンの象徴であるSPUシリーズの半身として生まれたといっても過言ではなく、事実上のSPU専用アームであると理解して差し支えありません。9インチショートアームの「212」と12インチロングアームの「309」をバリエーションとし、SPUシリーズはこのアームで再生した時にその真価を最大限に発揮する、と謳われています。

SPU 85 AnniversaryとRMG-212i(ともに生産完了)


シンプルな機構と針圧加圧用にアーム中心とカウンターウェイト間に張られたスプリングを露出させた外観から、本シリーズはダイナミック・バランス型トーンアームの見本のような製品であるといえます。業務用途に耐えうるものとして設計された、大型で頑丈なSPUのダンパーゴムを十分に動作させるためにはこのようなトーンアームとの共用が欠かせません。

SPUのAシェル(左)とGシェル(右)


そして、SPUには放送局やレコード会社でのプレイバック用途を想定した角型の「Aタイプ」ヘッドシェルと、MC昇圧トランスの内蔵が可能(一部製品のみ)な水滴型の「Gタイプ」ヘッドシェルがあります。本シリーズのトーンアームに「RMG」(Gシェル用)「RMA」(Aシェル用)の2パターンが存在するのは、この2種類のヘッドシェルに対応してのことです。そして上の写真で示した通り、AシェルはGシェルに比べてヘッドシェルの全長が短いため、RMAシリーズはトーンアームのパイプ先端がRMGシリーズよりも長くなっています。


RMAシリーズ以外でAシェルを使用するためのアダプター、APJ-1

なお、RMAシリーズ以外でAシェルのカートリッジを使用するためのオルトフォン純正アダプターとしてAPJ-1がありますが、これは一般のトーンアームでの使用を想定しています。RMGシリーズにAPJ-1を装着したAシェルのカートリッジを取り付けると、APJ-1分の重量がアームにかかってしまいゼロバランスが取れなくなります。

そのため、このAPJ-1をRMGシリーズと併用することはお控えください。


Ⅱ.RMG/RMAシリーズの針圧加圧方法

Ortofon RMG/RMAシリーズのウェイト機構部図

RMG/RMAシリーズは一般のトーンアームと異なり、基本的にゼロバランスの調整を想定していません(厳密にはカウンターウェイト側面や底面に配置されたウェイト固定用ネジを緩めると微調整を行うことが可能ではありますが調整幅が狭く、また針圧加圧用スプリングなども併せて調整する必要があるため推奨はしていません)。

これはカートリッジとヘッドシェルが一体(以降、この部分を便宜的にヘッド部分と呼称)となっているSPUシリーズの使用を前提としているためで、RMG/RMAともにヘッド部分の自重が30g程度(概ね31g前後が多いですが、ヴィンテージ製品は以前の持ち主に独自の調整を施されている可能性も高く、個体によるバラつきが大きくなっています)のカートリッジを取り付けるとゼロバランスが取れるようになっています。

つまり、このRMG/RMAシリーズは一般のトーンアームのようにカウンターウェイトを移動させてゼロバランスを取るのではなくヘッド部分の重量を均一にしてゼロバランス調整を行う必要がない状態で運用すべき製品であると理解した方が良いでしょう。そのため、使用にあたってはお手元のRMG/RMAシリーズでゼロバランスが取れるヘッド部分を1つ作成して重量の原器とした上で、このトーンアームで使用する全てのカートリッジを原器としたヘッドと同一の重量にすることが望ましいでしょう。

こうすることで事実上ゼロバランス調整は不要となり、針圧調整を行うだけでカートリッジ交換が可能というRMG/RMAシリーズ本来の利点が活かされてきます。

Ortofon RMG-309(生産完了)の針圧加圧用スプリング

針圧調整を行う際は、カウンターウェイト後端に刻まれた数字の目盛を取り付けたカートリッジの適正針圧値に合わせましょう。ウェイトの後端部を回すと、針圧加圧用のスプリングがウェイト内部に引き込まれてゆく様子を見ることができます。


放送局やレコード会社におけるプレイバック・スタンダード

先にも述べたように、RMG/RMAシリーズは放送局でのレコード盤プレイバック用、またレコード会社でカッティングされたレコード盤の検聴(再生検査)をするための業務用レコードプレーヤーと共に使用するためのトーンアームとして開発され、SPUとともに様々な環境下で使用されてプレイバック・スタンダードとしての名声を高めました。そして、レコード会社などからの要望に応じて逆オフセット(上図参照、アームパイプの曲げ角度が通常品と逆向き)の個体もごく少量のみ生産されています。

これは通常のレコード再生に用いるものではなく、レコード盤の検聴時に必要な逆回転(反時計回り)再生に対応したものです。下の動画では、この貴重な特別仕様を所蔵されていた海老澤先生による解説が行われていますので併せてお目通しください。


トーンアームについて Vol.6 使用時の注意事項編Ⅰに続く

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