ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2022.12.19
カートリッジ

カートリッジについて Vol.24 MC Q シリーズ編Ⅱ

このページでは、「カートリッジについて」のVol.24をお送りします。

本ページは、レコード針(カートリッジ)についての専門的な内容となる、オルトフォンのMC型カートリッジ「MC Q」シリーズについての説明を中心としています。基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「カートリッジについて Vol.1 基礎編」および「カートリッジについて Vol.23 MC Q シリーズ編Ⅰ」のお目通しをお勧めします。

Ⅰ.MC Qシリーズについて

MC Qシリーズは、1950年代のステレオレコード実用化に合わせて誕生したSPUを現代的なカートリッジにリファインさせたMC 10・20・30シリーズの現行製品です。歴代シリーズ初となる、エントリーモデルのMC Q5とモノラル仕様のMC Q Monoが加わったことで、より多彩な5機種のラインナップとなっています。

また先代のWシリーズに比べ、カートリッジ本体の自重が10.5g→9gに軽量化されています。軽質量なカートリッジにのみ対応しているトーンアームにも取り付けることが可能となっており、活躍の場を選びません。

また前項でも述べましたが、オルトフォンはMC Qシリーズの登場にあわせてLH-4000ヘッドシェルを開発しました。LH-4000自体は汎用のヘッドシェルでありQシリーズ専用の製品ではありませんが、本シリーズへの推奨ヘッドシェルとしてご理解頂けますと幸いです。


Ⅱ,MC Qシリーズの内部構造

Ortofon MC Q20の内部構造をあらわした図

1970年代に誕生した初代MC 20に端を発する本シリーズ最大の特徴は、SPUに比べ磁気回路のサイズが前後方向に約半分のサイズとなっていることです。これによりカートリッジ本体の自重を大幅に軽量化することができ、現代のMC型カートリッジに相応しく様々なトーンアームに対応することが可能となりました。しかし、当時はまだ強力な永久磁石が開発途上にあり、軽量化にあわせて磁石の質量も減らしたことでカートリッジ単体での出力電圧を十分に稼ぐことが難しく、これらの機種にあわせたMCヘッドアンプやMC昇圧トランスが必要でした。

しかし1980年代にネオジウム・マグネットが実用化されたことで、この課題は解決されました。オルトフォンも直ちにこれを採用し、HMCシリーズやMC Sシリーズ以降の全てのMC型カートリッジ(SPUシリーズを除く)に搭載しています。

Ortofon MC Q5の磁気回路とアルミフレーム(黒色部分)を示した図

MC Qシリーズの磁気回路にもこの強力なネオジウム・マグネットが採用されており、本シリーズのパワフルな音色を支えています。そして高出力かつ小型化された磁気回路は、カートリッジ天面と一体化されたアルミの切削フレームに固定されています(上図)。ヘッドシェルにカートリッジを固定するネジ穴が切られた天面とフレームを金属製とし、更にこれを一体とすることで不要共振が抑えられ、より高品位なアナログ再生が可能となります。そしてこの構造はエントリーモデルのMC Q5から、シリーズのフラッグシップであるMC Q30Sに至るまで共通となっています。

そして下の弊社公式YouTube動画では、MC Q5の内部構造を3Dアニメーションで紹介しています。エントリーモデルにも惜しみなく用いられている、オルトフォンの叡智の結晶をお目通しください。


Ⅲ.MC Qシリーズ各機種の特徴

MC Qシリーズ全体の特徴は先に述べた通りですが、ここからは各機種ごとの特徴について述べてゆきます。

本シリーズのスタイラスチップカンチレバーコイル巻線には様々な形状の針やマテリアルが使用されており、その違いによって各機種ごとに明確な特徴があります。スタイラスチップの種類と概要については、海老澤 徹 先生のご解説による下の弊社公式YouTube動画もあわせてご参照ください。

お手元で使用しているアンプやスピーカーなどの特徴なども十分に加味しつつ、MC Qシリーズを使用した際にご自身のアナログシステムの方向性を定めるための一助となれば幸いです。

ⅰ.MC Q5

MC Q5 正面
MC Q5 底面
接合針を採用

オルトフォンのMC型カートリッジのエントリーモデルにあたり、アルミパイプのカンチレバー楕円針という古くからの王道スタイルを貫いています。また0.5mVという高い出力電圧に支えられたエネルギッシュなアナログサウンドを魅力としており、MM型からMC型へとアップグレードする際の入門機としても最適です。

そしてアルミカンチレバーについては、下の弊社公式YouTube動画に海老澤 徹 先生の詳しい解説がございますのであわせてご参照ください。


ⅱ.MC Q10

MC Q10 正面
MC Q10 庭面
無垢ダイアモンド針を採用

このクラスのMC型カートリッジとしては初めて、コイルの巻線に純銀線を採用しました。煌びやかでダイナミックなサウンドを持ち味とし、スタイラスチップには無垢ダイアモンドの楕円針を採用。解像度も向上して音色のクリアさも両立しました。サウンドに力感が欲しいときは、このQ10の出番です。

ⅲ.MC Q20

MC Q20 正面
MC Q20 底面

MC 20初代モデル(中央、生産完了)
無垢ダイアモンド針を採用

オルトフォンのMCカートリッジを代表するモデルとして、SPUと並び今なお名高いMC 20シリーズ。コイル巻線には、聴感上のサウンドバランスやエネルギー感に優れた高純度銅を採用し、アルミ製のカンチレバーには無垢ダイアモンドのファインライン(高性能楕円針の一種)針を搭載しています。空間表現や豊かな低音再生能力に優れ、シルクのように滑らかで上質な再生音は、まさに至高のアナログサウンドと賞するに相応しい品格を備えています。


ⅳ.MC Q30S


無垢ダイアモンド針を採用


1978年の初代MC 30発売以来、代々の「MC 30」シリーズは同時代の上級ラインのカートリッジで得られた技術をいち早く取り入れ、ハイスペックかつコストパフォーマンスにも優れたシリーズとして伝統を積み重ねてきました。このMC Q30Sは、MC Q30によって現されたオルトフォンの理想とする現代型サウンドを忠実に引き継ぎつつ、豊富なノウハウを活用することで生まれた「MC 30」シリーズの7代目です。シバタ/サファイアのもたらす、極めてクリアなHi-Fiサウンドをお楽しみいただけます。

またシバタ針については、下の弊社公式YouTube動画に海老澤 徹 先生の詳しい解説がございますのであわせてご参照ください。



ⅴ.MC Q Mono

無垢ダイアモンド針を採用

MC Q10をベースとし、アーマチュアの配置とコイルの配線をモノラル仕様に再設計したカートリッジです。煌びやかでダイナミック、そしてクリアなベース機の音色はそのままとすることで、かつての名演奏をHi-Fiなサウンドで楽しむことができます。またMC Qシリーズは全機種共通でカートリッジの本体重量を9gに合わせているため、ヘッドシェルの重量が共通であればステレオ仕様のモデルとのカートリッジ交換も容易となります。

なお、モノラルカートリッジ使用時にはその構造に起因するノイズの発生に注意する必要があります。「MC昇圧トランスについて Vol.3 ノイズ対策編」でその方法について述べていますので、本機の使用を検討する際はあわせてお目通しください。

カートリッジについて Vol.25につづく

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