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アナログオーディオ大全

2023.01.12
トーンアーム
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トーンアームについて Vol.1 基礎編Ⅰ

本ページおよび次ページでは、レコード針(カートリッジ)再生時に使用するトーンアームについての概要を2つに分けてご紹介します。

トーンアーム調整方法について重点的に扱った基礎内容の解説ページもございますので、先に「トーンアームの調整方法について」のお目通しをお勧めします。

Ⅰ.トーンアームの成り立ち

トーンアームは、レコード針(カートリッジ)を先端に取り付けてレコード盤の音溝(グルーヴ)に刻まれた音声信号を読み取る(ピックアップ)するための機器です。

かつてはカートリッジ部分とトーンアーム部分は合わせてひとつの機器であり、文字通りピックアップ・システムと呼ばれていたこともあります。そのため1960年代頃までに生産されていたトーンアームは、それに取り付けるカートリッジがある程度想定されており、その特定のカートリッジを取り付けた際に十分な性能を発揮するよう設計されている製品が主流でした。

SPUシリーズなどの使用を前提として設計されたトーンアーム、Ortofon RMG-309


その代表例となるのが、上図に挙げたオルトフォンのRMG-309トーンアームです。これらのRMG/RMAシリーズは元来放送局やレコード会社などでのプレイバックを想定しており、SPUなどのユニットが納められたGタイプ(→RMG)/Aタイプ(→RMA)のヘッドシェルのみを取り付ける前提で設計されていました。そのため現在レコードファンの間で主流となっている様々なカートリッジを交換して楽しむための考慮は全くなされておらず、このRMG/RMAシリーズはSPUなどと共にあくまでひとつのピックアップ・システムとして使用するものと理解しておくべき製品です。

しかし、オーディオ文化の興隆と共に様々なカートリッジが登場すると、レコードファンの間ではこれらを複数所有して様々な音色を楽しむことが一般的となってきました。これに合わせるように、トーンアームも様々なカートリッジを交換することを前提とした仕様が主流となってきます。

標準的なトーンアームの全体図

上図にあるように、現在生産されているトーンアームはカウンターウェイト(バランスウェイト)を回してゼロバランス調整や針圧の加圧を行うものが主流となっています。このシンプルで簡便な方式と、次項で述べるユニバーサル型ヘッドシェルコネクターの普及により、1本のトーンアームで様々なカートリッジを手軽に交換し、楽しむことが可能となりました。

Ⅱ.ユニバーサル型のトーンアームとは

ユニバーサル型トーンアーム、Ortofon AS-212R先端のヘッドシェルコネクター

トーンアームに関する記述を読んでいくと、「ユニバーサル型」という単語が頻出することと思います。これはヘッドシェル後端とトーンアームの先端にコネクターを設けてアーム側のコネクターを回転させることで両者の挿抜を容易とし、スムーズなカートリッジ交換を可能としたものです。このコネクターを一般的にユニバーサル型コネクターと呼び、これに対応しているトーンアームも同じくユニバーサル型トーンアームと呼称されています。

SPUのGタイプヘッドシェル後端に取り付けられたユニバーサル型コネクター

上の写真は、トーンアーム側のユニバーサル型コネクターに対応したヘッドシェル側のコネクターを示したものです。ステレオ再生が一般化して以降は4本となった(モノラル時代は2本)信号伝送用のピンと、コネクターのシリンダーから上に向かっているロックピンが主な特徴です。このロックピンは一般的には上方向に1本のみの製品が多数ですが、製品によってはLH-4000のように上下2本であったり、SPUなどに使用されているAシェル(下の写真)のように下向きとなっているものも存在します。

ロックピンが下向きとなっているSPU Wood A(生産完了)のコネクター


そして、このユニバーサル型コネクターについての詳細について海老澤 徹 先生が解説しているものが下の弊社公式YouTube動画です。こちらもあわせてご参照ください。


海老澤先生の解説でも触れられている通り、ユニバーサル型コネクターはオルトフォンのG/Aタイプヘッドシェルのコネクターや英国SME社の3009/3012シリーズを源流として世界に普及しました。現在ではTechnics SL-1200シリーズをはじめとする多くのレコードプレーヤーに付属品として取り付けられているトーンアームの先端もユニバーサル型となっており、またこれらに互換性をもったヘッドシェルの存在によって様々なカートリッジを交換し、それぞれの音色を楽しむというレコード再生の醍醐味を堪能することが可能となっています。



Ⅲ.ユニバーサル型以外のトーンアームについて

ヘッドシェルとアームパイプが一体となっているトーンアームの例

ユニバーサル型以外で代表的なトーンアームとしては、上の写真のようにヘッドシェル部分とアームパイプが一体型となっているモデルが挙げられます。これらの製品はシェルのリード線とアームパイプ内部のインナーワイヤーが一体となっているものもあり、最小限の接点でカートリッジからフォノケーブル間の信号伝送を行うことが可能です。しかし、ヘッドシェル部分での切り離しが出来ないモデルの場合は一旦カートリッジを取り付けたらカートリッジ交換を行うことは困難につき、トーンアームとカートリッジの組み合わせはある程度固定となりがちです。また、先にも述べたようにユニバーサル型コネクターの使用を前提としたSPUシリーズやConcordeシリーズなどのカートリッジを使用することは不可能なため、一体型アームでこれらのシリーズを使用する際はユニバーサル型コネクターを必要としないSPU Royal NOMシリーズを推奨します。

アームパイプが一直線に伸びたストレートアームの例

また、ヘッドシェルとアームパイプが一体型となっているトーンアームはパイプ部分が曲線をもたないストレートな形状になっているものも多く、これらのアームを指してストレートアームと呼称されることがあります。なお、ストレートアームでもユニバーサル型コネクターに対応しているモデルは存在するため、「シェル・アームパイプ一体型アーム=ストレートアーム」とは限りません。


Ⅳ.トーンアームのショート・セミロング・ロングとは

トーンアームの分類方法のひとつに、アームの長さによる区分があります。トーンアームの取付先となるレコードプレーヤーのキャビネットサイズや設置環境によっては、長大なロングアームの取付が困難となるケースもあります。また日頃使用しているカートリッジの質量や適正針圧値によって、ショートとロングを使い分けてよりベストな組み合わせで再生することが理想的です。ここではトーンアームをショート・セミロング・ロングの3パターンに分類し、それぞれの特徴を解説してゆきます。

ⅰ.ショートアーム

オルトフォンの9インチショートアーム、AS-212R

トーンアームのうち、長さが9インチ前後の短いものを慣習的に「ショートアーム」と呼称しています。オルトフォンのアームでは、「212」という型番が付与されているものがこれに該当します。そしてSME社のトーンアーム「3009」という型番は、この9インチに由来しています。ショートアームの利点は、扱いが簡便なこととアームパイプの短さに起因する可動部分の軽さです。これは軽質量・軽針圧のカートリッジとの相性が良いため、この条件に該当する多くのMM型や軽量なMC型の使用に適している傾向があります。

ⅱ.セミロングアーム

続いて長さが10インチ前後のものは、慣習的に「セミロングアーム」と呼ばれています。かつての日本製のトーンアームには、このセミロングに該当する製品が数多く存在します。また、SME社のトーンアーム「3010」という型番は、この10インチに由来しています。一般的なレコードプレーヤーに付属しているトーンアームは、プレーヤーのキャビネットサイズの制約もあり基本的にはショートからセミロングまでのものが用いられています。

ⅲ.ロングアーム

オルトフォンの12インチロングアーム、AS-309R

トーンアームのうち、長さが12インチ前後の長いものを慣習的に「ロングアーム」と呼称しています。オルトフォンのアームでは、「309」という型番が付与されているものがこれに該当します。そしてSME社のトーンアーム「3012」という型番は、この12インチに由来しています。この長大なアームは本来、長時間再生を目的として開発された直径40㎝のレコード盤に対応して誕生したといわれていますが、その優美な姿から現在ではレコードファンにとって一種のステータスシンボルとなっています。そしてショートアームに比べアームパイプが長く、カウンターウェイトも大型化する傾向にあるため可動部分の質量が大きくなります。そのため、重質量・重針圧のカートリッジ(基本的にはMC型)との相性が良い傾向にあります。

トーンアームについて Vol.2 基礎編Ⅱに続く(工事中)

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