ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2023.04.18
トーンアーム

トーンアームについて Vol.8 用語一覧と解説編Ⅰ

本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生に用いるトーンアームについての用語解説を行います。トーンアームの調整方法について重点的に扱っていたり、基礎的な内容について解説したページもございますので、先に「トーンアームの調整方法について」および「トーンアームについて Vol.1 基礎編Ⅰ」のお目通しをお勧めします。

トーンアーム関連の用語一覧

トーンアームに関する用語は、呼称や定義が各社で異なるなど曖昧で複雑な部分も多くあります。本ページでは、まずトーンアーム本体の各部分の呼称とそれぞれが担う役目を解説し、続いて次ページでトーンアームのプレーヤー取付もしくは調整時に必要となる用語もあわせて述べてゆきます。

一部で「トーンアームについて Vol.1 基礎編Ⅰ」および「トーンアームについて Vol.2 基礎編Ⅱ」に記した基礎内容の理解が前提となる部分もありますので、本ページの閲覧に先んじてのお目通しを推奨します。

トーンアーム本体各部分の呼称一覧

Ortofon AS-212Rの各部を示した図

上の写真では、オルトフォンのAS-212Rを例としてトーンアーム本体の各部分の呼称を示しています。これらの役目と別称、その他注意点について述べてゆきます。

ⅰ.ヘッドシェルコネクター

Ortofon AS-212Rのヘッドシェルコネクター

ヘッドシェルコネクターはトーンアームのパイプ先端にあり、カートリッジを装着したヘッドシェルを簡単に脱着させるための部品です。一部には個々のトーンアーム専用のヘッドシェルコネクターもありますが、大多数のトーンアームでは「ユニバーサル型」と呼ばれるヘッドシェルコネクターが採用されており、相互に互換性を持っています。このユニバーサル型コネクターはレコードの黎明期にオルトフォンが業務用モデルのヘッドシェルを容易に挿抜することを目的として採用し、英国のSME社もこのコネクターを用いたことで各国に広まりました。現在では、このユニバーサル型コネクターがヘッドシェル用コネクターのスタンダードとなっています。

ⅱ.アームパイプ

Ortofon AS-212Rのアームパイプ側面

アームパイプは、トーンアームの中心部とヘッドシェルコネクターの間を支えてカートリッジを適正な位置で動作させるための部品です。パイプの形状により、S字型・J字型・ストレートなどに分類されます。オルトフォンのトーンアームでは、下図で示したAS-212Rのようにパイプ自体にオフセットアングルを持たせたS字型もしくはJ字型のアームパイプを採用しています。

Ortofon AS-212RのS字型アームパイプとオフセットアングルを示す図

また、アームパイプの素材にはトーンアームの感度向上を狙ってアルミやマグネシウム合金などの軽量な金属素材やカーボン、あるいは樹脂などがよく用いられますが、音響効果を狙って真鍮やステンレスなどの重質量な素材を用いる場合もあります。これらの素材選択は、トーンアーム自体のサウンドを決める大きな特徴となります。

ⅲ.アームレスト

Ortofon AS-212Rの本体ベース部分に組み付けられているC字型のアームレスト

アームレストは、アームパイプを嵌め込んだりロックすることで固定しておくための機構です。このレストはトーンアーム本体に組み込まれている場合と、下図のようにレコードプレーヤーのキャビネットなどに別建てとなる場合があります。

アームレスト(U字型)が本体とは別建てとなっている、Ortofon RMG-309

またレストでアームパイプを固定する方法としては、C字型やU字型(それぞれ上図)のレストに嵌め込む方式、またはC字型レストにロック機構が付けられたものが代表的です。ロック機構が付いたレストを備えたトーンアームの操作時には、事前にロックが外れているかを確認しましょう。ロックを外さずに操作を行うとアームに過大な負荷をかけ、動作機構部分を傷める恐れがあります。

ⅳ.アームリフター

Ortofon AS-212Rのアームリフター高さ調整を行っている様子

アームリフターは、トーンアームの先端に取り付けたカートリッジを再生する際に針先の昇降操作を補助するための機構です。古い時代のレコードプレーヤーには存在しなかったり、また電子化されたプレーヤーの場合はボタン式やフルオートでの動作が可能なものもありますが、ここでは例として最も一般的な手動式のアームリフターについて述べます。このタイプはブーメラン状の平らなリフターバーを昇降させてアームパイプを動作させ、レコード再生時のカートリッジの昇降をスムーズにすることを可能としており、上の写真で示したようにリフター単体の高さ調整が可能なモデルもあります。そしてレコード再生時、実際にリフターを操作するためには次に述べるリフターレバーが必要となります。


ⅴ.リフターレバー

リフターレバーを上げた様子

リフターレバーを下げた様子

先に述べたアームリフターを、手動で昇降させるためのレバーがリフターレバーです。このレバーを上げるとアームリフターのバーが上がり、同様に下げるとバーが下がります。そしてリフターレバーを降ろした時のみ、リフターシリンダー内部の充填剤のはたらきによってリフターに支えられたアームパイプと針先は緩やかに降下します。なお、リフターレバーは繊細なパーツにつき、操作時に必要以上の負荷はかけないようにしましょう。

ⅵ.アンチスケーティング(インサイドフォースキャンセラー)

Ortofon AS-212Rでアンチスケーティングの調整を行っている様子

アンチスケーティングは、レコード再生時に盤内周側に向けて引き寄せられる力を外周側に引き戻す役目をもっています。そのためインサイドフォースキャンセラーとも呼ばれます。基本的に、レコード盤は時計回りに回転して針先は内周の方向へと進んでゆきます。故にレコード再生中のカートリッジは常に内周側へと引き寄せられている状態となっているため、偏りを外周へと引き戻し左右からかかる力を均等にしています。一般的には、使用カートリッジの針圧と同じ値をかけるべきとされています。

ⅶ.カウンターウェイト(メインウェイト、バランスウェイト)

カートリッジの水平バランスを取ったり針圧の加圧に用いるカウンターウェイトは、ゼロバランス用ウェイトの他にサブ用途で用いる(針圧加圧用、ゼロバランス時の重量追加用など)ためのウェイトが存在する場合はメインウェイトもしくはバランスウェイトとも呼称されます。基本的に個々のトーンアーム専用に設計されており、ショートアームとロングアーム(例:Ortofon AS-212/309Rなど)ではサイズも質量も異なり、共用は想定されていません。また、AS-212Rのようなスタティック・バランス型のトーンアームではカウンターウェイトでゼロバランスと針圧の調整を行いますが、ダイナミック・バランス型のトーンアームでは基本的にゼロバランスの調整にのみ用い、針圧加圧はトーンアームに内蔵されたバネで行います。

ⅷ.針圧目盛(目盛盤)

Ortofon AS-212Rの針圧目盛盤

スタティック・バランス型トーンアームのカウンターウェイトには、(多くの場合)ウェイトの前面に数字と目盛が刻まれた針圧目盛盤が取り付けられています。この目盛盤はゼロバランス調整時にはウェイトとは別にスライドさせて使用します。なお、スタティック・バランス型トーンアームの中には針圧目盛に数値が刻印されていなかったり、サブウェイトを通したシャフトに目盛が刻まれている場合もあります。こういった場合は、製品付属の取扱説明書をよく読んで内容を理解してから使用しましょう。また、ダイナミック・バランス型トーンアームの場合は原則的にカウンターウェイトで針圧調整を行うことがないため、針圧目盛は針圧加圧バネを操作するための加圧ノブに刻まれているものが大多数を占めています。



ⅸ.アームベース

Ortofon AS-212Rのアームベース

アームベースは、トーンアーム本体から伸びるアームシャフトをレコードプレーヤーのキャビネットに固定するための部品です。多くの場合、この部品にはアルミや真鍮、ステンレスなどの金属素材が使用されており、キャビネットへの固定にはネジやナットなどが用いられます。また、多くのアームベースにはシャフトを固定するためのネジ(例:上の写真、ベース側面のイモネジ)などがあり、ここを緩めるとアーム本体の高さ調整や左右方向の振り角度を調整することができます。


トーンアームについて Vol.9 用語一覧と解説編Ⅱに続く

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