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アナログオーディオ大全

2023.03.13
トーンアーム

トーンアームについて Vol.7 使用時の注意事項編Ⅱ

本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生用トーンアーム使用時の注意事項についての解説を行います。トーンアーム調整方法について重点的に扱っていたり、基礎的な内容について解説したページもございますので、先に「トーンアームの調整方法について」および「トーンアームについて Vol.1 基礎編Ⅰ」「トーンアームについて Vol.2 基礎編Ⅱ」のお目通しをお勧めします。

トーンアーム使用時の注意事項―メンテナンス・輸送編

トーンアームの使用に際しての基本的な内容は上に示したリンク先で述べたとおりですが、本項ではその内容以外にも留意すべき注意点を述べてゆきます。前回の「セッティング編」に続き、今回は「メンテナンス・輸送編」と題してトーンアームのメンテナンスや輸送時に留意すべき内容をまとめています。

ここに述べる内容は、過去に物損事故が発生した実例をもとに記しております。ご一読の上、教訓としてご活用頂けましたら存外の喜びです。


Ⅰ.ベアリングなどの機構部分への注油は厳禁

トーンアームの機構部に市販オイルやグリスの注入はNG

トーンアームには、ベアリングなどの精密な機械部品が多数組み込まれています。これらの部品が適切に動作することで、トーンアームに取り付けられたカートリッジは十分にその性能を発揮することができます。そして多くの場合、トーンアームの機構部分には製造メーカー特注品の専用オイルが使用されているため、ここに市販の機械用オイルやグリス、浸透潤滑剤などを注入するとベアリング内部に不純物が混入してパーツを損傷させたり、粘度の異なるオイルが入ることで感度の低下を招く恐れがあります。

そしてトーンアームの極端な感度低下はカートリッジに対して想定外の高負荷をかけてしまい、カートリッジの針先やレコードの盤面を損傷する恐れがあります。製品の取扱説明書に明確な指示がある場合を除き、機構部分への市販オイル・グリスなどの注入は絶対に行わないでください。

また、オイルダンプ式のトーンアームには製品内部にダンピング用のシリコングリスを注入して使用するタイプの製品があります。これらの製品も、基本的にはグリスの注入先が取扱説明書に明記されており、メーカー指定の純正グリスが存在する場合がほとんどです。ダンピング用グリスがベアリング部分に混入するとアームの感度が落ち、トレース能力が低下するトラブルも散見されますので、オイルダンプ式トーンアームの使用時は常に水平を保ち、輸送などで動かす際は完全にダンピング用グリスを抜くようにしましょう。


Ⅱ.コネクターに接点復活剤を使用しない

トーンアームのコネクターは、無水エタノールでクリーニングする

トーンアームのコネクターの接点クリーニングには、無水エタノールの使用をお勧めします(接点復活剤は樹脂パーツの劣化や破損を促す恐れがあるため、使用しないでください)。また、トーンアーム本体のクリーニング時には一旦カートリッジを外し、作業時には乾いた柔らかい布やカメラ用のブロアーなどをご使用ください。(コネクター接点を除く)アーム本体に対してシンナー、ベンジン、アルコール等の溶剤は使用しないでください。



Ⅲ.製品分解は厳禁

トーンアームの機構部分をご自身で開封し、分解することは理由の如何を問わず絶対におやめください。トーンアーム自体の故障や破損の原因となり、またカートリッジなどの周辺機器に影響を及ぼす恐れもあります。

製品の不具合を感じた場合は絶対にご自身で分解を行わず、必ずご購入の販売店様もしくは製造メーカーに相談してください。

Ortofon ASシリーズのネジ開封厳禁箇所 ①
Ortofon ASシリーズのネジ開封厳禁箇所 ②

上に示した図は、オルトフォンのスタティック・バランス型トーンアームASシリーズの開封禁止箇所を示したものです。本シリーズは極めて精密な調整が施されており、上に示した箇所のネジを開封すると製品の性能低下や機構部分の破損、内部配線の断線につながる恐れがあります。開封すべきではない箇所は他社のトーンアームでも概ね共通につき、これを一例としてご理解を頂けますと幸いです。

そして、同じくASシリーズの取扱説明書に記載されている取扱時の注意点を下記に抜粋します。この内容もまた、オルトフォン製品以外のトーンアームにも広く該当するものばかりです。

製品の改造がなされていたり、お客様原因の破損が著しく修復が困難と判断された場合は、修理をお断りいたしますのでご了承ください。

・弊社以外で行われたアーム内部配線の交換は製品の改造に該当します。ヘッドシェルコネクターや内部機構の破損、配線交換による感度の低下などが発生する可能性がありますので、絶対におやめください。

・本機は生産工場で精密な調整を施されており、ネジを緩めると動作に影響する部分が多数存在します。指定された場所のネジを動かすことは絶対におやめください。

・本機の調整に際しては専用の工具・治具が用いられています。開封・分解厳禁箇所に対して市販の工具を用いると部品破損の原因となりますので絶対におやめください。

トーンアームの修理依頼のうち、修理費用が高額となったり修理をお断りするケース(地震などの天災や輸送事故に起因するものを除く)は、上記注意事項に反して内部の固定ネジを開封したり、製品の改造を行ったことに起因するものが大多数です。

特に近年、インターネットの情報を元にDIY感覚で内部配線の交換にチャレンジして端子部分を破損させたり、内部配線を太く硬い導線に交換してしまいアームの感度低下を招いて音溝のトレースができなくなる事故が多発しています。トーンアームの内部配線取り付けや交換は高度な習熟が求められる作業であり、生産工場によってはこの作業専任の作業員が配置されているほどです。そしてこの内部配線の太さや硬さはそのままトーンアームの生命線である感度に影響するため、製造メーカーではこれを維持するために内部配線の組成や強度、直径、被覆なども含めて吟味を行った上で採用しています。メーカーが採用する純正パーツには、相応の意図があるということをご理解頂ければ幸甚です。


Ⅳ.輸送時には必ずカウンターウェイトを外す

トーンアームの輸送時は、必ずウェイトシャフトからカウンターウェイトを抜く

トーンアームの破損原因として非常に多いのが、輸送時にカウンターウェイトを取り付けたまま梱包し、振動などで負荷がかかって内部機構のベアリングなどにダメージを与えるというものです。また、同じく輸送時に(アーム本体にウェイトが装着された状態で)アームレストからアームパイプが外れ、内部で暴れてしまいベアリングを破損させるケースも見受けられます。更に、その際にカウンターウェイトがアーム本体から脱落して輸送箱内を転がり、高価なレコードプレーヤーとトーンアームを傷だらけにしたという事例も報告されています。

これらの事故が発生した場合、トーンアームの修整を行うと新造以上の工数を要する上に完全分解を行う場合もあるため、修理費用が非常に高額となったり修理不可としてご返却するケースも多くみられます。この事故は輸送時にカウンターウェイトを外して別梱包とするだけで防ぐことができますので、トーンアームの輸送に際しては必ずカウンターウェイトを外しましょう。

また、何らかの理由によってトーンアームを輸送する事態が発生する可能性に備え、製品の外装箱やフォームは極力お手元に保管されることを推奨します。トーンアームの輸送に際してはアーム本体からカウンターウェイトを外し、それぞれを純正フォームに入れることが最も理想的であり安全です。



Ⅴ.高温多湿な環境下で使用しない、ホコリに注意

基本的に、トーンアームには金属部品が多数使用されています。高温多湿な環境下で使用すると製品の寿命を縮めますので、加湿器などの至近を避けて湿気の少ない環境で使用して下さい。

また、ホコリ(火山灰や砂を含む)の多い環境での使用も内部機構などへの混入によるダメージが懸念されます。故障の原因となりますので、これも避けるかなるべく留意してください。

トーンアームについて Vol.8 用語一覧と解説編Ⅰに続く

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