ortofon JAPAN CO,LTD.

AS-212R

―「R」はReference。スタティック・バランス型トーンアームの決定版―

デンマークのカートリッジメーカーであるオルトフォンは、業務用として生まれた高性能な自社カートリッジの検聴や音楽再生を行うためにスタートさせたトーンアームの開発や生産も古くから行っています。1950年代に初のトーンアームを開発して以来、スタティック・バランス型のSMGシリーズ、またダイナミック・バランス型の銘機として今なお名高いRMA/RMGシリーズやRFシリーズなどの様々な製品を生み出してきました。
これらに続いて誕生したASシリーズは、アーム本体にレストやリフターを備えた現代の標準的なスタティック・バランス型トーンアームとして誕生し、9インチショートモデルの「212」と12インチロングモデルの「309」をラインナップしながらモデルチェンジを重ねて現代に至ります。
このスタイルを踏襲しつつ新たに開発された本シリーズは、製品コンセプトをReference(リファレンス)と定め、数多あるトーンアームの基準器となるような精度と堅牢さ、またこれらに支えられて現れる「正統な音」によって、レコード盤の音溝からカートリッジがピックアップした音声信号をよりハイ・フィディリティ(Hi-Fi、高忠実度)なままに伝送させることを目指し、現実のものとしました。
歴代シリーズで培われた知見の全てを活用したことでオルトフォン史上最高のトーンアームとなったAS-212Rは、「Reference」の名そのままにカートリッジと愛聴盤の魅力を最大限に引き出します。

●アーム軸中心→センタースピンドル:214㎜ ●オーバーハング:18㎜ ●オフセットアングル:23.75° ●スタイラスポイント→シェル後端:52㎜ ●トーンアーム・ジオメトリ:Baerwald alignment(IEC推奨、ヌルポイントは66および120.9㎜) ●アームシャフト直径:18㎜ ●アームシャフト用穴径の推奨値:22㎜ ●アームベース固定ネジの位置:ベース中心から直径40㎜地点、3本分を120°で等分 ●針圧対応範囲:0~4g ●カートリッジ対応自重:18~26g(標準ウェイト時、シェル含む)/26~38g(重量ウェイト時、シェル含む) ●本体重量:600g(標準ウェイト時)/630g(重量ウェイト時)
定価
¥382,000(税別)
(税込¥420,200)
パッケージセット内容:
フォノケーブル、標準ウェイト、重量ウェイト ※ヘッドシェル・カートリッジ別売

Ⅰ.新装成った、伝統のASシリーズ

オルトフォンのスタティック・バランス型トーンアームは、1970年代に発表された初代AS-212以来、代々「AS」の型番を冠しています。このAS-212や続くAS-212 MkⅡはアンチスケーティングやアームリフターを備え、かつスタティック・バランス型アームの感度を活かして当時主流であった軽質量カートリッジの再生を念頭としていました。しかし時代の変遷とともに、ASシリーズを用いた重質量カートリッジの再生も望まれるようになります。オルトフォンはこれに応え、続くモデルではアーム本体の高剛性化を行い、重量級カートリッジの使用にも耐えられる堅牢な仕様を追求しています。そしてこのAS-212RではSPUシリーズやConcordeシリーズの使用を想定して針先→シェル後端の長さを52㎜設定とし、また差換式のヘッドシェルとカートリッジの合計自重が30gを超える重質量カートリッジの再生にも対応。そして、アームパイプの角度と再生時の針先位置をIEC(International Electrotechnical Commission)の推奨するベアワルド(Baerward)・アライメントに準拠させています。

Ⅱ.取り扱いの容易な、スタティック・バランス型トーンアーム

AS-212Rは、取り扱いが容易でシンプルなスタティック・バランス型の針圧加圧機構を採用しています。ユニバーサル型のヘッドシェルコネクターにカートリッジ付きのヘッドシェルやSPUなどのヘッドシェル一体型カートリッジを取り付け、ゼロバランスを取ってから針圧を加圧、そしてアンチスケーティングを調整した後にレコード盤へと針を下ろす。新たなASシリーズは、我々の体に染み付いた一連の操作を行うだけで高品位なレコード再生を可能とするトーンアームです。

※下記動画ではスタティック・バランス型トーンアームについて解説しています。

Ⅲ,アルミ製アームパイプの採用

シンプルなスタティック・バランス型の構造と、高精度なピボット(円錐形の回転軸)およびベアリングの採用によって実現した高感度を十全に生かすため、AS-212RのS字型アームパイプやハウジングケースなどの可動部には真鍮やステンレスよりも軽質量で固有の付帯音が少ないアルミニウムを使用しています。そのため重質量な金属素材を用いた製品よりもアームパイプを含む可動部が軽質量化されており、特にMM型に多い軽針圧・軽質量なカートリッジの再生も考慮した仕様となっています。

Ⅳ.高精度な真鍮切削部材を多用した機構部分

先に述べた通り、本シリーズではアームパイプやハウジングケースに軽質量なアルミを採用しています。そのため、アームパイプを含む可動部はほどよく軽量化されています。このような可動部の軽質量化は高性能なトーンアームの設計を行う上で極めて重要ではありますが、それのみを是として極端な軽量化に走ると使用可能なカートリッジの選択肢を狭め、結果として軽質量・軽針圧なカートリッジ専用のトーンアームとなってしまう恐れがあります。しかしながら「オルトフォンのトーンアーム」である以上、SPUに代表される重質量・重針圧なカートリッジが使用可能という期待を避けて通ることはできません。この相反する要素の両立という難問に対し、オルトフォンが出した答えは各パーツの素材を使い分け、動作時の質量を適切に配分することでした。ピボットやベアリングを組み込んでアーム中心部の支点を構成する軸受パーツや、これらの動作機構部分とリフター、レスト、アンチスケーティングをプレーヤーに固定している基部およびシャフト部分には剛性に優れた真鍮の切削材を使用。動作機構の中心部と基部であるベース部分では逆に質量のある素材を用いてリジッドで強固な土台を形成したことで、再生音の安定感を向上させ、同時に低音域の解像度も飛躍的に向上させています。そして動作時の質量配分に際して最大の要となるカウンターウェイトは軽・中質量用(カートリッジとヘッドシェルの合計自重18~26g)と重質量用(同26~38g)の2個を製品に付属させ、それぞれをカートリッジの自重にあわせて挿し替える方式を採用しています。
その一方で、アームパイプ先端のシェルコネクター素材はあえてアルミではなく真鍮としました。頻繁なヘッドシェルの挿抜に伴う摩耗を避け、コネクターの機械的寿命を延ばすためにはこれが最良であるという判断に至ったためです。その代わり、コネクターの黒いロックナット部分では表面のローレットを細かく彫り、本来の滑り止めとしての役目を更に十全としてグリップ感を向上させつつ部材の肉抜きも兼ねさせることで、強度を保ちながら可能な限りの軽量化を図っています。そして、ロックナットとハウジング、ウェイトシャフト、カウンターウェイトの表面には美しいブラックのマットクロームメッキ加工を施し、シンプルで落ち着いたモノトーンカラーとしました。

Ⅴ.低音域での共振を防止するためのダンピング・システム

AS-212Rののカウンターウェイトを取り付けるウェイトシャフト基部には、低音域で発生しうる部分共振への対策としてダンピング用のラバージョイントが組み込まれています。このジョイントでアーム本体からウェイトシャフトを浮遊させ、部分共振を抑えることでハウリング対策をより強固なものとし、またそれに伴うS/N感の向上をもたらしています。

高精度、堅牢、そして使いやすさ。業務用モデルから連綿と続く、オルトフォンのトーンアームに通底する理念はこの「Reference」にも受け継がれています。

Series Line Up