ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2022.05.18
カートリッジ

カートリッジについて Vol.20 2M編Ⅰ

このページでは、「カートリッジについて」のVol.20をお送りします。

本ページは、レコード針(カートリッジ)についての専門的な内容となる、オルトフォンのMMカートリッジ「2M」シリーズについての説明を中心としています。基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「カートリッジについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

Ⅰ.Moving Magnet=MM→「2M」

オルトフォンのカートリッジ「2M」シリーズの名称は、発電方式のMoving Magnet(ムービング・マグネット)=MMから採られています。デンマークの本社Ortofon A/Sでの製品コンセプト策定に際し、「覚えやすくモダンな英数字の名称」という方針の下で複数の案が出され、その中から2つ並んだMで「2M」という簡潔で明瞭なシリーズ名が採用されました。

また、本シリーズは外観デザインにおいても徹底した理想の追求が行われ、オルトフォン製品では既にMC JubileeMC Kontrapunktシリーズで実績のあった著名なインダストリアルデザイナースタジオ、ミュラー・イェンセン・イノベーション&デザイン(Møller Jensen Innovation and Design)の手によって「用の美」を備えたモダンなデンマーク・デザインとなりました。

2M Bronze

直線と平面のみを使用し、針先とレコード盤面に向けて真っすぐに伸びていくシンプルなフォルムは、ダイアモンドなどの宝石を光の屈折によって輝かせるためのファセット(切子面)から着想を得ました。そしてオルトフォンが誇るスタイラスチップ「レプリカント100」にも似たこの外観は、ダイアモンド針がレコード盤の音溝(グルーヴ)をトレースしていく様子を表現しています。

Ortofon Replicant100 スタイラスチップ

そして、2Mシリーズは全機種の自重(カートリッジ本体の重さ)が7.2gに統一されています。同シリーズ(かつ同重量のヘッドシェル)であれば、ゼロバランスを取り直さずに針圧調整のみでカートリッジの差し替えが可能である点も特徴のひとつです。

2Mシリーズは全て、自重7.2gの共通仕様


Ⅱ.MM型カートリッジの構造について

オルトフォン製MM型カートリッジの基本構造

上図のように、MM型はレコード盤の音溝と直に接するスタイラスチップが付いたカンチレバーの根元を支えるダンパーの先に永久磁石(マグネット)が取り付けられ、スタイラスチップがレコード盤の音溝をなぞる(トレースする)とマグネットが動き、発電が行われて音声信号が生じるという構造になっています。故に、この型式はMM=Moving Magnet(ムービング・マグネット)型と呼ばれます。

MC型(左)とMM型(右)の構造イメージ図

MC型とMM型の機構をシンプルに、かつ概念的に示したものが上図です。MC型は振動系にコイルが巻かれ、これが可動式(ムービング・コイル=MC)となっていますが、MM型ではコイルは本体側に固定された芯(ポールピース)に巻かれ、振動系には磁石が取り付けられています。この磁石が動くためにMM型と呼ばれており、両者の相違点となっています。

2Mシリーズの振動系部分拡大図

またMM型の特徴として、スタイラスチップカンチレバーダンパー・マグネットを含む振動系部分(上図)と、発電コイルが納められた磁気回路(下図の銀色のシールドケースに納められた部分、発電系とも称される)部分を構造上、分割することが可能という点が挙げられます。

2Mシリーズの磁気回路(Generating system)部分

カンチレバーを折った等の破損時、振動系部分が組み込まれた針先のユニット(オルトフォンでは「Stylus、スタイラス」と呼称。一般的には「交換針」)を交換することで再び音楽再生が可能となります。MC型と異なり、MM型の場合はユーザー様ご自身が、お手元で針先交換を行うことが可能です。

2M Redの交換針(スタイラス)、Stylus 2M Red


また2Mシリーズは、スタイラスを挿し換えることで手軽にアップグレードを行うことが可能です。2Mシリーズではカートリッジ本体に3種類のバリエーションがあり、その中でスタイラスに互換性のある組み合わせが数パターン存在します。これについては別項「MM型カートリッジの針先(スタイラス)交換について」をご参照ください。

「VMS」以来の伝統、オルトフォン独自の磁気回路

オルトフォンのMM型内部構造図

上図は先述の磁気回路図から、銀色のシールドケースを取り除いてコイルなどの内部構造を露出させたものです。2MシリーズをはじめとするオルトフォンのMM型カートリッジは、コイルを巻いた芯(ポールピース)の先端4点が正方形の四隅となる位置に等間隔で配置されています。この先端4点の対角線が交わる中心部分にカンチレバーと連結された棒状のマグネットが位置し、スタイラスチップが音溝をトレースして上下左右に動いた際に発電が行われ、音声信号となります。

VMS30 MkⅡ(生産完了)

この磁気回路はオルトフォンが1969年に発表したVMS(Variable Magnetic Shunt)と呼ばれる方式のカートリッジで確立された機構を受け継いだもので(後にマグネットやボディの位置・形状が変更され、現行MM型との互換性はなし)、既に長い実績をもっています。VMSの開発および機構の特許取得には後に「ミスター・SPU」と称されたチーフエンジニアのロバート・グッドマンセン氏も携わっており、この磁気回路はMM型における「オルトフォン・タイプ」と言っても過言ではありません。

2M Redの振動系部分拡大写真

また、マグネットとカンチレバーをスタイラスユニットに取り付け、適切な位置で支持しながら動作時の制動も行うダンパーはデンマーク本社工場で100%内製化されており、素材の配合比や質量、弾力といった全ての仕様項目が厳格に管理されています。更には新たなダンパー素材の開発も積極的に行われており、2021年に発売された2M Black LVB 250には新規開発されたダンパーゴムが初めて採用されました。2Mシリーズのクオリティ維持には、この自社開発・自社生産のダンパーが欠かせません。

2M Black LVB 250


カートリッジについて Vol.21に
続く

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