ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2024.10.17
修理・針交換・針先交換 Pick Up

レコード針(カートリッジ)の修理について

本ページでは、レコード針(カートリッジ)の『修理』についての解説を行います。

ご愛用のカートリッジが正しく動作しない場合は、その原因を探りつつ対策を取る必要があります。

対策を取ってもなお改善が見られない場合は、カートリッジの『修理』にあたる処置が必要となりますので、その方法についても述べつつ、弊社公式YouTube動画を交えながら解説してゆきます。


カートリッジ修理の前に

本ページをお目通しの皆様は、ご使用中のカートリッジに何らかの不具合が生じたために対処方法をお調べの方も多いことと拝察します。

カートリッジの不具合に際しては、修理以前のステップとして日々のメンテナンスで対応が可能なケースも多くあります。お手持ちのカートリッジが、カンチレバーの折損やスタイラスチップの脱落などの重大な破損状態にない場合は、発生している不具合症状に合わせて下記リンク先もお目通し頂くことをお勧めいたします。

『レコード針の音が出ない時の対処について』

『レコード再生時の音かすれ・途切れへの対処について』

『レコード再生時の音ビリ付き、割れへの対処について』

上記リンク先に記された対処法をお試しの上で、改善が見られなかった場合は以下の項目をお目通しください。

Ⅰ.カートリッジの『寿命』

カートリッジには、製造から30年以上を経過してなおレコード再生が可能な個体も存在しています。

ただ、オーディオ機器以外のすべての機械製品にも共通することですが、カートリッジには寿命が存在します。こういった個体は既に開発当初に想定されていた機械製品としての寿命を大幅に過ぎているものばかりであり、当該機種のスペックシートに記された性能や開発者が想定していた音色のクオリティを新品同様に担保することは不可能です。あくまで現状において、運良く再生が可能な動作個体であるとご理解下さい。また、残念なことに動作個体が使用不可能となってしまった場合は、弊社では後述の「Ⅱ.カートリッジの『修理』とは」に記されたメニューの修理サポートを承っておりますので、必要に応じてご検討を頂けますと幸いです。

なお、販売店様やWeb上の個人売買などで入手可能な中古品の状態や音色、当該の中古品に対する所見などについてのお問い合わせに対しましては、事業者様・個人のお客様を問わず弊社からのご回答はお断りさせて頂いております。中古品についてのご質問は、弊社ではなく当該製品お取り扱いの販売店様や出品者様にお尋ねください。

また中古品の購入に際しては、販売店様や出品者様とよくご相談のうえ、ご自身の判断と責任のもとで納得できるものをお買い上げください。特にヴィンテージと称される旧製品は、経年により弊社での対応が不可能であり修理やサポートをお断りしているものも存在しています。こういった製品は、十分な製品知識をもち、今なおサポートが可能な販売店様からご購入されることをお勧めいたします。

Ⅱ.カートリッジの『修理』とは

弊社で承っているカートリッジの『修理』は、実質的に以下の3種類に大別されます。

ⅰ.MC型カートリッジの『針交換』

詳細は後述の「Ⅲ.MC型カートリッジの『針交換』について」で述べますが、弊社ではMC型カートリッジの一部製品(後述の『本国リペア』対象製品)を除き部分修理を行っておらず、『針交換』と呼ばれる現行モデルへの有償本体交換にてご対応しています。

繰り返しとなりますが、弊社では『本国リペア』の対象製品を除き、MC型カートリッジの部分修理(スタイラスチップの再接着、カンチレバーの継ぎ直しなど)は承っておりません。上記の針交換対応にて承りますので、ご理解下さいますようお願い申し上げます。


ⅱ.一部MC型カートリッジの『本国リペア』

同じく「Ⅳ.MC型カートリッジの『本国リペア』について」で詳細を述べますが、弊社MC型カートリッジのうち一部の製品では針交換ではなくデンマーク本社工場における部分修理を承っています。本国リペアの対象となる機種は『針交換・ユニット交換 価格表』からご確認ください。なお、この本国リペアに対しても新品同様に1年間の製品保証が付随します。


ⅲ.MM型カートリッジの『針先交換』

DJ用の製品を含む弊社MM型カートリッジは、針先部分の破損が発生した際には先端の『交換針』と呼ばれるパーツをお手元で差し換えることで修理を行うことが可能です。後述の「V.MM型カートリッジの『交換針』について」をご参照のうえ、ご自身で針先交換を行ってください。

なおオルトフォン製品の場合、正規品に付属している弊社発行の保証書に記載された『保証期間』はご購入日より1年間です。ご購入日から1年以内で製品が原因の故障(お客様原因の破損や天災などを除く)が発生した場合は、ご購入もしくはご近隣の販売店様経由でお預かりし、弊社にて状況確認の上で状況確認を行います。その結果、故障と認められた場合は無償にて修理もしくは新品交換(製品による)にて対応させて頂きます。

他社製品の場合は、製造メーカーごとに保証内容や受付方法が異なりますのでご購入の販売店様もしくは製造メーカー様にお問い合わせください。

Ⅲ.MC型カートリッジの『針交換』について

上の図はMC型カートリッジの基本構造を示したものです。レコード盤から音声信号を読み取るためのスタイラスチップを先端に取り付けたカンチレバーの根元には、振動を電気信号に変換するための発電用コイルが取り付けられています。コイルと磁気回路の金属枠(ポールピース)の間にはダンパー(多くの場合、ゴム系素材)と呼ばれる緩衝材が挟まっており、コイルはダンパーに支えられることで適切な動作を行うことが可能となります。

そのため、一般的なMC型カートリッジはカンチレバーとコイルの巻芯(アーマチュア)が固定され、そこにコイルの巻線が巻かれています。この巻線はそのままカートリッジのリード線接続端子に直結されていることが多いため、MM型のように簡単に針先部分の脱着を行うことはできません。

よって、MC型カートリッジの修理は下記「Ⅳ.MC型カートリッジの『本国リペア』について」に該当する機種を除き『針交換』での対応となります。

Ortofon SPU Wood A(生産完了品)の裏面。シェル内部にユニットが取り付けられている

またMC型カートリッジのうち、オルトフォンのSPUシリーズはヘッドシェルとカートリッジ本体が一体構造となっています(上の写真を参照)。そのため、SPUシリーズの針交換はヘッドシェル内部の本体ユニットを交換する『ユニット交換』での対応となります。ヘッドシェルやリード線の交換は行いません。

その他の詳細については、『MC型カートリッジの針(ユニット)交換について』もあわせてお目通しされることをお勧めいたします。

Ⅳ.MC型カートリッジの『本国リペア』について

先に述べた通り、MC型カートリッジの修理は『針交換』と呼ばれる現行機種への有償本体交換での対応にて承っております。

一部の上位モデルは、針交換ではなくデンマーク本国でのリペア対応となります

ただ、『針交換・ユニット交換 価格表』の機種欄に赤の二重丸が記されている機種については、販売店様の修理窓口経由でカートリッジをお預かりし、リペア同意書にお客様のご署名を頂いた上で弊社よりオルトフォンのデンマーク本社工場に当該カートリッジを送付、破損部品の交換、再組立などの修理を行った上でご返却する流れとなります。また、この本国リペア対象機種の納期はお預かり後40日~となります。

Ⅴ.MM型カートリッジの『交換針』について

上の図はMM型カートリッジの基本構造を示しているものです。MC型と異なり、カンチレバーの根元には磁石(マグネット)が取り付けられています。よってムービング・マグネット(Moving Magnet)の名の通り、磁石の動作で発電が行われる仕組みを備えています。

オルトフォン製品に限らず他社製品にも概ね共通している方法ですが、MM型(もしくはそれに類する機構)のカートリッジはカンチレバーやマグネットを含む動作部分(振動系)にコイルが関わらないため、針先付近のアッセンブリーパーツを挿抜することで針先部分を交換することが可能です。これにより、スタイラスチップカンチレバーなどを破損させた場合の修理が可能となります。

MM型カートリッジは、交換針(スタイラス)部分の脱着が可能

このパーツは一般的には『交換針』、オルトフォンでは『Stylus(スタイラス)』と呼称されています。オルトフォン製品の場合は、全国の弊社製品お取扱店様経由でお取り寄せを頂くか、下記リンク先の弊社公式オンラインショップよりご購入頂くことが可能です。

・Hi-Fi製品(2M・Concorde Music・300・500シリーズなど)はこちら

・DJ製品(Concorde MkⅡ・VNL・旧Concorde/OMシリーズなど)はこちら

※旧製品のM・MF・F・FF・VMSシリーズのスタイラスは、生産終了につき弊社でのお取り扱いはございません。

一部のMM型では、交換針の差し換えによるアップグレードも可能

なおスタイラスの交換に関連して、2MやConcorde Musicシリーズでは他機種の交換針を挿すことで機種のアップグレードを行うことも可能です。

またDJ用カートリッジのVNLでは、交換用Stylusを3種類から選択し、DJプレイ時に望ましいと感じられるフィーリングをカスタマイズすることも可能です。

DJ用カートリッジ、Ortofon VNLは3種のStylusからフィーリング選択が可能

その他の詳細やスタイラスの交換手順については、下に挙げた弊社公式YouTubeチャンネルの動画や『MM型カートリッジの針先(スタイラス)交換について』および『DJカートリッジの針先(スタイラス)交換について』もあわせてお目通しされることをお勧めいたします。

Ⅵ.修理不可となる症例・状況について

カートリッジの修理に際しては、大半の事例において針交換・本国リペア・交換針の挿し換えを行うことで対応が可能です。しかし、何らかの事情や製品の状態によっては修理受付が不可能であったり、修理をお断りする事例もあります。これらの事例について、弊社製品を例としながら想定されるケースを以下に解説してゆきます。

ⅰ.お客様および販売店様による改造品

お客様および販売店様の手によってカートリッジ本体が開封され、改造が行われたと判断された製品は、購入日からの経過日数にかかわらず1年間の保証対象外となります。また、原状復帰が困難であったり弊社純正部品とは異なるものに置き換えられていた場合、安全性や動作保証の観点から修理をお断りし、ご返却させて頂くこともあります。

ⅱ.カートリッジ本体のネジ穴破損、ネジの破断

オルトフォンの現行カートリッジは、ボディ天面にネジ留めするタイプが大半を占める

現行の弊社カートリッジは、多くのモデルで本体天面にネジ穴が切られており、取付ネジをヘッドシェルに通した上でカートリッジ本体に直接ネジ止めする方式を採用しています。また、弊社カートリッジ天面のネジ穴直径はJIS規格に当てはめると『M2.5』に統一されています。そのため、一般的に(他社の)カートリッジ用として付属されていたり、オーディオ用アクセサリーとして流通している『M2.6』のカートリッジ取付用ネジは、オルトフォンのカートリッジ天面にネジ穴が切られているモデルには使用することができません。

そのため、M2.5に対応した弊社カートリッジのネジ取付穴に無理やりM2.6のネジを取り付けると、ネジが外れなくなったり破断して穴を塞ぐ可能性があります。

特にMM型カートリッジの場合、ネジ穴を含む本体部分の破損に対する修理・復旧は承っておりません。くれぐれも取付ネジ径をご確認の上、M2.5の取り付けネジをご使用下さいますようお願い申し上げます。また、径の異なるネジの使用に起因する破損やネジ破断は製品保証の対象外となります。

なお、MC型カートリッジの場合もネジ穴破損やネジの破断などに対しては同様に、当該カートリッジそのものに対しての処置は承っておりません。しかし、MC型の場合は針交換を行うことで現行機種への有償本体交換を承ることは可能です。

また、弊社公式オンラインショップではM2.5のネジセットをお取扱いしております。『カートリッジのヘッドシェル取付用ネジについて』とあわせてお目通しの上、必要に応じてご利用ください。

ⅲ.カートリッジ本体の破損

MC型カートリッジの場合、カートリッジ本体や振動系、リードワイヤー接続端子が破損した場合の部分修理は(本国リペア対象機種を除き)不可能ですが、上記ⅱの解説と同様に針交換を行うことで現行機種への有償交換を行うことが可能です。

ただ、旧M・MF・F・FF・VMSシリーズ、Concordeシリーズを含むMM型カートリッジの本体が破損した場合は、部分修理は不可能です。これらの製品は破損時に本体を開封して内部を修理もしくは部品の交換をしたり、破損したハウジング交換を行うことを想定した構造ではありません。

なお例外として、Concorde MusicおよびDJモデルのConcorde MkⅡのようにフィンガー部分の挿し換えが可能な機種は、フィンガーパーツを別途ご購入いただくことでお手元での交換が可能となります。


ⅳ.ヘッドシェルの破損、経年変化

ヘッドシェル一体型のカートリッジ(オルトフォンではSPU、Concordeシリーズなど)では、使用中に衝撃が加わることで破損したり、数十年単位での使用により経年変化が発生することがあります。こういったヘッドシェル部分のうち、旧製品の多くは製造終了からの年月経過により修理部品が払底しています。一部修理お預かりにて対応可能なケースもありますが、基本的には旧製品のヘッドシェル部分は修理受付不可であるとご理解頂けますようお願い申し上げます。

ⅴ.旧SPU GTシリーズのMC昇圧トランス断線

旧SPU Classic GTシリーズの内部構造を示した図

SPU GTシリーズ(ここでは現行製品のSPU GTE 105SPU GTX SSPU GTX Eを除く)のMC昇圧トランスは、SPUのGタイプヘッドシェルに内蔵するため一般のそれよりもはるかに小型化されています。このトランスが断線するなどして使用不可となった場合、トランス自体の修理は不可能です。

また、旧GTシリーズに搭載可能なトランスは既にパーツ在庫が存在しないため、トランスの交換も同様に不可能です。そのため、仮に針交換希望としてお預かりした旧GTシリーズにトランス部分の断線が発生している場合、弊社では断線したトランスを取り外し、一般のトランスなしSPUとして現行シリーズClassic G/GEへの針交換を行うかたちでご対応しています。

ⅵ.本国リペア対応機種を除くMC型旧製品の部分修理

先の「Ⅱ.カートリッジの『修理』とは」で述べた通りですが、本国リペアの対応モデルを除き弊社ではカートリッジの部分修理を承っておりません。MC型の旧製品をお預かりし、当該個体を分解して部分的な修理を行うことはなく、全て現行製品への針交換をご案内させて頂きますのでご了承ください。

ⅶ.ヴィンテージ製品の修理・復元

長い歴史を持つオルトフォンは、1940年代からレコード再生に関する製品を生産しています。この頃から1960年代頃までの機器がヴィンテージ製品として珍重されていますが、多くは製品寿命を超えているためにメンテナンスを要する状態と思われます。弊社では旧SPU A/AE/G/GE(GTシリーズ含む)の針交換を承っておりますが、これを除くType-A/C/C99/C100、旧CG25D/CA25D(CG25Di/CA25Diおよび現行のCG25Di MkⅡは針交換可能)などの修理・メンテナンスは部品枯渇につき修理をお断りしております。これらの製品の修理は、十分な知識と経験をもつヴィンテージオーディオのお取扱店様にご相談ください。

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