本ページでは、レコード盤の再生を行うための機器であるレコードプレーヤーを構成する各アイテムについて解説してゆきます。
レコード針(カートリッジ)やヘッドシェル、トーンアーム、フォノケーブルについては、それぞれのリンク先をご参照ください。
また、レコード再生初心者の方は、最初に「はじめてのレコード再生・機材編」「はじめてのレコード再生・操作編 Vol.1」「はじめてのレコード再生・操作編 Vol.2」をお目通しされることをお勧めします。

レコード盤で音楽を聴くためには、専用のプレーヤーを用意する必要があります。これをレコードプレーヤーと呼びますが、この機材はオーナー様が様々な調整を行うことで再生される音楽のクオリティを上げることができます。また、プレーヤーを構成する部品や機構も数多くあり、これを理解しておくと先に述べた調整や先々の機材アップグレードの際にも役に立ちます。
本ページでは、レコードプレーヤーについての基礎として代表的な構成部品と機構についての解説を行います。より詳しい解説を必要とされる方へは、この『アナログオーディオ大全』で既に取り上げた専門ページへのリンクを表示しましたので、これもあわせてお目通しください。
先にも述べましたが、レコードプレーヤーからは持ち主であるオーナー様の知識・経験次第でそのプレーヤーのグレードからは信じられないほどにハイクオリティなサウンドを再生することも可能です。本ページと『アナログオーディオ大全』が、そのお役に立てたとしたら幸いです。
ここからは、レコードプレーヤーを構成する各部品についての解説を行います。
以下に挙げる各部品や機構は、概ねどのプレーヤーでも採用されているものですが、プレーヤーの仕様によっては数種類の部品が一体構造となっていたり(例:下記①と②、②と③など)、逆に機構が省かれているもの(例:下記⑩、⑪)もあります。
レコードプレーヤーを新たに使用する場合は、製品に付属している取扱説明書を読み、機器の仕様や操作方法を理解してからセッティングを行ってください。

カートリッジ(レコード針)は、レコード盤の音溝(音声信号を物理的な振動に変換し、レコード盤面に刻んだ溝のこと)から音声信号をピックアップするためのアイテムです。プレーヤーを構成するパーツの中では唯一音溝に直接触れるため、カートリッジの性能や仕様がレコードプレーヤー全体のクオリティを左右するといっても過言ではありません。

このアイテムは一般的に下記②のヘッドシェルに取り付けて使用されますが、ヘッドシェルと③のトーンアームが一体となっている場合はトーンアームに直接取り付ける場合もあります。
カートリッジについての詳細は、下記に示した各リンク先のお目通しを推奨します。

ヘッドシェルはトーンアーム(後述)の先端に装着する、カートリッジの脱着を容易とするためのアイテムです。
「ヘッドシェル」の名の通り、古くはトーンアーム先端に付いた姿がシェル(貝殻)状となってカートリッジを覆っていたり、一体構造となっているものが多数を占めていました(例:上の写真)。また、更に時代を遡るとカートリッジとヘッドシェル、トーンアームの3つはひとつのものとして扱われ、レコード盤から音を拾い上げるための「ピックアップ・システム」と呼ばれていました。
しかし、オーディオ機器の進化と趣味性の高まりによってこの3つを独立したアイテムとして扱い、それぞれの組み合わせ方を工夫することでオーディオシステムの音色をカスタマイズする楽しみ方が定着しました。そのため、今日ではカートリッジ・ヘッドシェル・トーンアームは一般的に個別のアクセサリーと認識されています。

カートリッジをヘッドシェルに取り付ける方法についてや、ヘッドシェルそのものについての詳細は、下記に示した各リンク先のお目通しを推奨します。
また一方で、カートリッジの利便性や軽量化(≒高性能化)などを追求した結果、カートリッジとヘッドシェルが取り外し不可能な一体型となっている製品も存在します。
その代表例が、オルトフォンのConcordeシリーズです。このシリーズは音溝の追従(トレース)性能向上を追求した結果、カートリッジ先端側を超音速旅客機の機首のような形状としています。現代において、ヘッドシェル一体型のカートリッジはこのような性能追及を理由としたものや、リードワイヤーの配線を不要とする目的の製品が多数を占めます。


トーンアームは、カートリッジやヘッドシェルを装着し、その動作を支えながら音声信号をフォノケーブル(後述)に伝送するためのアイテムです。
カートリッジがレコード盤の音溝から読み取った振動(音楽信号)を伝えるため、滑らかに上下左右に動作することができます。先にも述べたように、現代のトーンアームは様々なカートリッジを交換してその音を楽しむ前提でつくられているため、ある程度は対応可能な範囲をもっています。そのため、針圧調整やカートリッジの高さ調整、ほぼ全てのヘッドシェルと互換性をもったコネクターなどを備えているものが多くあります。

上の図は、標準的な姿のトーンアームとその各部名称を示したものです。トーンアームの使用・調整の方法については、下記リンク先のお目通しをお勧めします。

上の写真は、現在最も一般的なヘッドシェル装着用コネクターである「ユニバーサル型コネクター」を示したものです。オルトフォンのヘッドシェルとトーンアームのために開発されたこのコネクターは、いまや多くのプレーヤーで使用されています。このコネクターを備えたトーンアームとヘッドシェルであれば、コネクターの形状に互換があるため挿し換えて使用することができます。その詳細については、下記リンク先もあわせてお目通しください。
なおトーンアームの機種によってはユニバーサル型のシェルコネクターを備えずに、下の写真のようにヘッドシェルとトーンアームのパイプが一体型になっており、簡便なヘッドシェルの取り外しを考慮しない、もしくは取り外し不可能な製品も存在します。

これはコネクターを設けることによってトーンアームの質量バランスに制約が生じたり、接点が増加するなどの影響を避けるねらいがあります。こういったトーンアームを採用しているレコードプレーヤーの場合は、トーンアームと一体となっているヘッドシェルに直接カートリッジを取り付けねばなりません(下のYouTube動画をご参照ください)。
なお、基本的に1台のレコードプレーヤーには1本のトーンアームが取り付けられていますが、一部のモデルではトーンアームを増設して2本以上取り付けることが可能なプレーヤーも存在します。カートリッジは様々な重量・形状をもち、本来であればカートリッジにあわせてトーンアームを使い分けることが理想的です。こういったプレーヤーは、その理想を追求したり様々なカートリッジの交換を容易としたりすることが可能です。

レコード盤を載せ、回転させる円盤部分は一般的にプラッターと呼ばれます。ただ、同一部分を指してターンテーブルと呼称することもあるため、用語の厳密な定義を要する場合には注意が必要です。
このパーツはほぼ全てのレコードプレーヤーに使用されており、LPレコードのサイズに合わせた直径12インチ(約30cm)程度のサイズであることが一般的ですが、ポータブル式のプレーヤーなどでは小型であったり、折り畳み式となる場合もあります。

キャビネットは、レコードプレーヤーの各部品・機構を取り付ける板や箱状のパーツです。蓄音機の時代から、美観や加工性の良さ、共振の吸収や利用を目的として木製のキャビネットが多く用いられてきました。 これは現代においても変わるところはありませんが、業務用プレーヤーなどを中心に堅牢な金属製のものが用いられたり、技術発展によりFRP(繊維強化プラスチック)を採用したキャビネットなどもみられるようになりました。
なお、ハイエンドオーディオ用のプレーヤーでは、このキャビネットを金属切削やキャスティング(鋳造)などで作製する場合もあります。この場合は音響に与える効果やデザイン性が優先されるため、一般的な板・箱状のキャビネットとならずに独自性豊かな形状をもちます。

レコードプレーヤーのキャビネットには(一部例外あり)、プレーヤーの設置場所で発生している振動をシャットアウトしたり、キャビネットの水平調整を行うための脚部が取り付けられています。
レコードプレーヤーを棚などに設置する場合は、この脚部が問題なく接地する場所を選ぶ必要があります(例:プレーヤーの四隅に脚が取り付けられている場合、四脚全てが均一に接地する場所にレコードプレーヤーを設置する必要がある)。複数ある脚部のうち、1つだけが接地していなかったり設置場所からはみ出しているなどの場合、再生中にプレーヤーがぐらつく、傾くなどしてレコード盤面やカートリッジを破損させる可能性があり、非常に危険です。
また、多くのレコードプレーヤーの脚部にはキャビネットやプラッターの水平出しを行うための高さ調整機構が備わっています。一般的なものは、脚部を回転させると内部のネジ機構が連動して伸縮し、高さの微調整を行うタイプです。この場合は、複数ある脚部の高さをそれぞれ微調整して水平調整を行うことができます。
レコード再生を行うにあたって、プレーヤーの水平調整は必須の作業です。調整方法については次ページで解説します。

レコードプレーヤーとアンプのPHONO(フォノ)入力との間を結ぶケーブルには、ノイズ対策のためのシールドやアースを取るためのアース線が設けられています。そのため、一般的なオーディオ用ケーブルとは別にフォノケーブルと呼ばれています。
このケーブルは、レコードプレーヤーの機種や仕様によって接続方法や端子を使い分ける必要があります。以下に4つの例を挙げますので、お手元のレコードプレーヤーがどの例に当てはまるかを確認してみましょう。また、下記リンク先のお目通しもあわせて推奨します。
ⅰ.フォノケーブルがプレーヤー直付けのもの
フォノケーブルがプレーヤーに直付けされている製品は、エントリーモデルや1980年代頃までに発売された機種に多くみられます。これらの製品は、フォノケーブルの交換を前提としていないためケーブル交換によるカスタマイズを行うことはできません。ケーブルの破損や断線などが発生し、交換を要する場合はプレーヤー本体を開封し、内部基板などに取り付けられている線材を外す必要がありますが、これらの作業には専門的な知識と経験が必要であり、製造メーカーのサービス担当者や修理業者以外がこれを行うと製品保証や修理受付の対象外となる恐れもあります。
こういった製品のケーブル交換を行う場合は、製造メーカーなどにご相談ください。
ⅱ.プレーヤーのキャビネット/トーンアームにRCA端子が備えられているもの
レコードプレーヤーのキャビネットやトーンアームにフォノケーブル接続用のRCA端子とアース端子が備えられている機種は、RCA端子を備えたフォノケーブルを交換することができます。
ケーブルの破損や断線時の交換が容易であるだけでなく、単売品のフォノケーブル(例:下の写真、Ortofon 6NX-TSW1010R)に差し換えることでプレーヤーシステムのアップグレードを行うことも可能です。

ⅲ.プレーヤーのキャビネット/トーンアームに5pin端子が備えられているもの
先のⅱに類似した例として、キャビネットもしくはトーンアームに「5pin端子」が備えられている場合もフォノケーブルの交換が可能です。このタイプの端子は単売品のトーンアームなどで多く使用されており、一部のプレーヤーではキャビネットにこの5pin端子が備えられています。
この端子は、俗に「DIN 5pin端子」とも呼称されています。ただ、DIN(ドイツ工業規格)の5pin端子とは厳密な互換が無いため、本ページおよびオルトフォンではこれを「フォノ5pin端子」と呼称しています。
フォノ5pin端子を備えたプレーヤーやトーンアームの場合は、先に述べた両端がRCA端子のケーブルではなく、片側がフォノ5pin端子のケーブルを使用します(例:下の写真、Ortofon 6NX-TSW1010)。ケーブルの差し替えにより、システムのアップグレードを望むことができます。

ⅳ.プレーヤーのキャビネット/トーンアームに専用端子が備えられているもの
現在販売されているレコードプレーヤーのケーブル接続用端子は、基本的に上記ⅱとⅲで述べた2種類が用いられています。しかし、ヴィンテージ品や海外製品などでは、これらに当てはまらない製品も多くあります。ケーブルの脱着が可能であっても専用の端子が用いられている場合は、実際の運用上では上記ⅰと同等の扱いとなる場合が多く、ⅱやⅲで述べたケーブルを使用することはできません。
なお、現代においてはBluetoothなどによるワイヤレス伝送機能をもったレコードプレーヤーも存在しますが、これを用いる場合はフォノケーブルを使用することはありません。
レコードプレーヤーの電源ON/OFFを操作するスイッチです。プレーヤーの仕様によっては、電源のON/OFFスイッチとプラッター回転のSTART/STOPスイッチが1つに集約されており、電源ONと同時に回転がスタートするものがあります。
また、プラッターの回転停止を補助するブレーキ機構が付いたプレーヤーの場合、START/STOPスイッチを使用せず、電源スイッチのOFFで回転を止めようとするとブレーキが作用せず、プラッターの静止が遅くなることもあります。
意図しないプラッターの動作でカートリッジの針先やレコード盤の盤面を破損することもありますので、取扱説明書の確認や盤に針を降ろす前の試験操作を行うなどして、電源スイッチの操作でプレーヤーがどのように動作するかを理解しておくことが大切です。

現在入手可能なレコードプレーヤーは、ほぼ全てのモデルがLP盤およびEP盤に対応した33 1/3回転と45回転に対応しています。それに加え、かつてはゼンマイ式の蓄音機や電蓄(電機蓄音機)などで再生されていた78回転のSP盤に対応可能な製品も増えてきました。
レコードプレーヤーの回転数は、概ねこの「33 1/3」「45」「78」回転の3種類に集約されます。この回転数を切り替える機構は基本的に全てのプレーヤーに存在しており、ボタンやセレクタースイッチなどで操作することができます(78回転に未対応のプレーヤーも多くあるため、78回転盤を再生する場合はプレーヤー側が対応しているか確認してください)。
なお極めて例外的ですが、過去には16回転のレコードもありました。我が国におけるアナログ研究の第一人者、海老澤先生のお話をご紹介します。

先の⑨は、レコード盤側で指定(記載)されたプレーヤーの回転数を切り替えるための機構です。これとは別に、⑨で切り替えた回転数を微調整するための機構が回転スピード調整機構です。
上の写真で示した機構は、Technics SL-1200シリーズで採用されている回転スピード微調整用のフェーダーです。このタイプは、⑨で切り替えた回転数に連動して微調整を行うことができますが、1970年代前半頃までのプレーヤーに搭載されたスピード調整機構は33回転用/45回転用がそれぞれ独立してキャビネットに配置されているパターンが多数を占めます。この場合は、⑨で切り替えた回転数と同一側の調整機構(例:33回転での動作時は33回転用)を操作する必要があります。
なお、この機構は全てのプレーヤーに必ず備わっているものではありません。ひとつの例としては、水晶発振などを利用した回転数の制御機構を備えた高精度なプレーヤーなどの場合はプレーヤー本体がプラッターの回転数を検知して自動補整を行います。そういったプレーヤーの場合はスピード調整機構を必要としないため、これが省かれる傾向にあります。

レコードプレーヤーの回転ズレやムラを確認する方法はいくつかあります。まずはストロボ盤を用いたストロボスコープを使用する方法、もしくはプラッターに備えられたストロボにライトを当てて縞を読み取る方法などがあります。
多くの場合は、上の写真のようにプラッター側面などに縞もしくは丸状の凹凸が備えられ、プラッターの回転中に電源周波数と同期したネオンライトを照射して回転速度を目視確認することが一般的です。
先に述べたことと若干重複しますが、1970年代後半頃からクオーツロック(水晶の発振を利用した回転制御)方式のプレーヤーが普及し、回路が正常動作している限りは速度の微調整や確認を行う必要がなくなったため、ストロボ方式の回転数確認機構は省かれてゆく傾向にありました。この頃のプレーヤーは回転数が合っているか「確認」するのではなく、クオーツロックが正確に動作していることを「表示」するランプが点灯したり、セグメントディスプレイで回転数を示すことができるもの、あるいはこの表示機構を完全に廃しているものが主流となりました。
1990年代を過ぎると、確認機構をもたないベルトドライブ式プレーヤーが再度普及してきたこともあってストロボ盤とライトに分かれたストロボスコープが再度用いられるようになります。
ストロボスコープの使用方法については、下記リンク先をお目通しください。
先の④で挙げた、プラッターを回転させるためのパーツです。基本的には時計回りで駆動するものですが、業務用やDJ用の一部には逆回転(反時計回り)を行うことが可能なモデルもあります。使用するモーターの種類やプラッターを回転させる方法によって数種類に分けられますが、これについては次のページで別途に解説を行います。