ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2026.04.01
昇圧トランス
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MC昇圧トランス使用時のインピーダンスについて

 本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生時に使用する、MC昇圧トランス使用時の「インピーダンス」について解説します。

基礎的な内容の解説ページもございますので、先に「MCカートリッジの昇圧・音量増幅の方法について」および「MC昇圧トランスについて Vol.1 トランス概説編」のお目通しをお勧めします。

昇圧トランス使用時のキーワード、「インピーダンス」

レコードの再生機器を接続・操作する際、「インピーダンス」は理解しておいた方がよい単語のひとつです。

レコード盤の音溝から音声信号をピックアップするためには、基本的にレコード針(カートリッジ)を使用します。またその際には、MM型やMC型などのコイルと磁石を用いた電磁型のカートリッジを用いることが一般的です。そのため、コイルを用いるこれらのカートリッジと、(いわば)コイルの交流抵抗といえるインピーダンスは不可欠の関係にあります。

MM型やMC型などの電磁型カートリッジは、コイルか磁石の動作で発電を行う

上の図は、MM型とMC型の内部構造を示したものです。双方ともにコイルが内蔵されていることが分かりますが、MM型ではコイルの量(巻数)が多く、逆にMC型では少なくなっています。

コイルの交流抵抗といえるインピーダンスは、その巻数が多いほど高くなり、少ないほど低くなります。またコイル巻数が多いほど、カートリッジの出力電圧(音量)も大きくなる傾向があります。

このため内蔵コイルの巻数が多く、カートリッジ内部のインピーダンスも極めて高い(数百~1kΩ程度)MM型カートリッジは、4~10mV程度の出力電圧を得ることができます。それに対し、MC型カートリッジはコイルの巻数が少なく、内部インピーダンスは2~100Ω程度で出力も0.2~1.5mV程度に留まります。

このため、MC型カートリッジを使用する際は、レコードプレーヤーとMM用フォノ入力の間にMC昇圧トランス(もしくはMCヘッドアンプ)を用いて音量アップを行う必要があります(MC対応のフォノ入力が存在する機器の場合は不要)。

本ページでは、このMC昇圧トランス使用時に必要となる「インピーダンス」への理解を深めるべく、それぞれの機器使用時に参考とすべき単語や数値の解説を行います。

なお、この「アナログオーディオ大全」では「カートリッジについて Vol.16 インピーダンス編」「MC昇圧トランスについて Vol.2 基礎編」などで既にインピーダンスに関連する解説を行っていますが、記述の内容が広範囲にわたるため、本ページではMC昇圧トランスに関連する

Ⅰ.内部インピーダンス

Ⅱ.対応インピーダンス

Ⅲ.内部インピーダンスのロー/ハイ

Ⅳ.インピーダンス・マッチング

Ⅴ.ロー出し/ハイ受け 


に絞ったものとします。

MCヘッドアンプのインピーダンスに関する記述は、先にも述べた「カートリッジについて Vol.16 インピーダンス編」の「負荷インピーダンスについて」をご参照ください。

また、下の動画はアナログ研究の第一人者である海老澤 徹 先生が、MC昇圧トランスとMCヘッドアンプについて解説しているものです。それぞれに特有のメリットや構造の違いなどについても触れられていますので、併せてご参照されることをお勧めします。


Ⅰ.内部インピーダンス

MC型カートリッジの構造イメージ図

内部インピーダンス(デンマーク本社の英語表記:Internal impedance)は、カートリッジ内部の発電コイルがもつインピーダンス(交流抵抗)値のことを指します。この値はカートリッジの構造や仕様によって千差万別で、規格などで統一されたものではありません。

内部インピーダンスの値は、MC・MMどちらの方式のカートリッジにもスペックとして存在していますが、MM型でこれを意識せねばならない局面はほぼありません。逆に、MC型カートリッジをMC昇圧トランスと組み合わせて使用する際は必須のものとなります。

MC昇圧トランス Ortofon ST-90


※MC型カートリッジをMCヘッドアンプと組み合わせる場合は、「負荷インピーダンス」の値を参照する必要があります。詳細は「カートリッジについて Vol.16 インピーダンス編」の「負荷インピーダンスについて」をご参照ください。

MC型の内部インピーダンスは、オルトフォン製品に限らず各社カートリッジのスペック欄に必ず記載されています。単に「インピーダンス」とのみ記載されている場合もありますが、多くの場合はこの内部インピーダンスのことを指しています。スペックの表記が曖昧で判別が困難な場合は、カートリッジの製造メーカーもしくは取扱代理店に確認することを推奨します。

下の動画は、海老澤先生がMC型・MM型の内部インピーダンスについて解説しているものです。こちらも併せてご参照ください。


Ⅱ.対応インピーダンス

対応インピーダンス切替が可能な、Ortofon ST-70

対応インピーダンス(デンマーク本社の英語表記:Recommended cartridge impedance)は、先に述べたMC型カートリッジ側の内部インピーダンスに対し、その接続先となるMC昇圧トランス側が対応しているインピーダンス値を記したものです(例:昇圧トランス側の対応インピーダンスが10Ω以下と表記されている場合、内部インピーダンス10ΩまでのMC型カートリッジに対応していることを指す)。これは昇圧トランス側のスペック値であり、MC型カートリッジ側のスペックを指したものではありません。

また、よく誤解されがちではありますが、この値は昇圧トランスの1次側インピーダンスそのものを表したものではありません。

これは、昇圧トランスの「対応インピーダンス」として表記された値の範囲内に、接続するMC型カートリッジの内部インピーダンス値が収まっていれば機器同士のインピーダンス・マッチング(後述)が取れていると理解すべきものです。また、英語表記に「Recommended」とある通り、この値は推奨値です。昇圧トランス側の対応インピーダンスの範囲を超過している内部インピーダンス値をもったMC型カートリッジを接続しても、機器が破損することはありません。

フロントパネルで対応インピーダンス切替が可能な、Ortofon EQA-2000(生産完了)

なお、オルトフォンの製品を例にとると、昇圧トランスのST-70や同一のトランスユニットを搭載したEQA-2000 フォノイコライザーアンプ(生産完了)のように、一部には対応インピーダンスの切替が可能な製品もあります。

その場合は、接続対象となるMC型カートリッジの内部インピーダンスになるべく合わせて対応インピーダンス値の切替を行うようにしましょう。ST-70の対応インピーダンス切替方法については、下の動画を参照してください。


そして下の動画は、海老澤先生がMC昇圧トランスやMCヘッドアンプの対応インピーダンスを合わせる時の方法について解説しているものです。使用時のセオリーや心構えについても述べられておりますので、併せてご参照ください。




Ⅲ.内部インピーダンスの「ロー」「ハイ」について

先に記した「Ⅰ.内部インピーダンス」の中で、MC型カートリッジの内部インピーダンス値は千差万別であり、全ての機種で一定の値に定められているものではないことを解説しました。

ただ、この値にはある程度のパターンが存在し、厳密ではないものの2種類のグループに大別することができます。これについて、以下に解説してゆきます。

・内部インピーダンス2~10Ω程度の製品

ロー・インピーダンスの代表例、Ortofon SPUシリーズ(内部インピーダンス2~7Ω程度)

このグループは、一般的に「ロー・インピーダンス」のMC型カートリッジに分類されます。コイルの巻数が少ないため内部インピーダンスと出力電圧が低い(≒音量が小さい)ものが多く、MC昇圧トランスやヘッドアンプの併用がほぼ前提となります。

オルトフォンのMC型カートリッジは、一部例外はありますがこのロー・インピーダンスに属するものが大半です。振動系の根元部分にあるコイルの巻数を少なくすることで、その実効質量を小さくして振動系を軽量に保ち、針先の感度を高く保つことを意図しているためです。

・内部インピーダンス40~100Ω程度の製品

このグループは、一般的に「ハイ・インピーダンス」のMC型カートリッジに分類されます。コイルの巻数が多いため内部インピーダンスと出力電圧が高い(≒音量が大きい)ものが多く、MC昇圧トランスやヘッドアンプを併用する際はロー・インピーダンス用ではない製品か、インピーダンス切替が可能な製品であればハイ・インピーダンス用のポジションに合わせることを推奨します。

また、極めて少数ながらMM型と同程度の出力電圧をもつ高出力のMC型カートリッジも存在し、これらは概ねハイ・インピーダンスに属します。こういった高出力なMC型はMMポジジョンへの接続を前提としているものがあるため、当該カートリッジの使用時にはスペック表や取扱説明書を確認するようにしましょう。

内部インピーダンス100Ω、MM接続前提のOrtofon SPU Monoシリーズ

上記の分類方法は、MC型カートリッジそれぞれの内部インピーダンス値を比較した際の相対的な見方を示したもので、絶対的な中央値や最高・最小値が存在するものではありません。ここで示した区分もあくまで目安程度のものであり、この中に納まらない値のモデルも存在します。

下の動画は、海老澤先生がMC型カートリッジのロー・ハイそれぞれのインピーダンスの特徴や利点について解説しているものです。こちらも併せてご参照ください。

「インピーダンス・マッチング」について

ここからは、MC型カートリッジとその接続先機器(MC昇圧トランスやフォノイコライザーアンプなど)との間で意識すべき「インピーダンス・マッチング」について解説します。

※厳密には、MM型カートリッジとフォノイコライザーアンプとの間でもインピーダンス・マッチングを意識する必要がありますが、MM型カートリッジの推奨負荷抵抗値とMMポジションのPHONO入力の負荷抵抗値は概ね47kΩもしくは50kΩに固定されており、一部機器を除いてマッチングの選択肢がほぼないためここでの解説は割愛します。

先に述べたとおり、MC型カートリッジの内部インピーダンスは概ね「ロー」と「ハイ」に大別されます。これの接続先となるMC昇圧トランスには、

①:ロー・ハイのいずれか、あるいは特定の内部インピーダンス値のみに対応しているもの

②:トランス側対応インピーダンス値の切替が可能なもの(例:3・10・40・100Ω)

③:ある程度広範な対応範囲をもつもの(例:2~60Ω)

などのパターンが存在します。

MC型カートリッジと昇圧トランス、もしくはこれを内蔵したフォノイコライザーアンプなどを接続する場合は、

①:カートリッジ側の内部インピーダンス

②:昇圧トランス側の対応インピーダンス

③:カートリッジの内部インピーダンスがロー・ハイどちらかに該当するか

  (トランス側の表記がロー・ハイのみの場合)

の順に確認を行い、整合(マッチング)の可否を判断する必要があります。

この作業を経て、双方のインピーダンスが整合すると確認された状態を一般的に「インピーダンス・マッチングがとれている」と言い表しています。MC型カートリッジと昇圧トランスを使用する際は、上記の手順でマッチングの確認作業を行ってください。

なお、この作業は機器チョイスの方法次第では、これをある程度省略することも可能です。多くの場合、MC型カートリッジを開発・生産しているメーカーは自社製品の使用を想定したMC昇圧トランスも開発しています。そのため、このインピーダンス・マッチングについて考慮するなら、カートリッジと昇圧トランスを同一メーカーで揃えてしまうことが最も簡易なマッチングの方法であるともいえます(インピーダンスだけではなく、音色のマッチングもある程度担保されるため)。

※ただし、対応インピーダンスの切替が可能な昇圧トランスなどの場合は切替ポジションの位置などを確認する必要があるため、トランスの仕様に応じて確認作業が必要となる場合もありますのでご注意ください。

ちなみに、カートリッジ側の内部インピーダンスが5Ω、トランス側の対応インピーダンスが3・10・40・100Ωなどとなっている場合は、内部インピーダンス(この場合は5Ω)に最も近い3Ωで受けることが一般的です。しかし、音色の好みなどに応じて10Ωのポジションで受けても問題はありません。トランス側の対応インピーダンスは、あくまでカートリッジの内部インピーダンスの近似値に合わせればよいものだとご理解ください。

なお、MCカートリッジと昇圧トランス間のインピーダンスが大幅に乖離している場合、低音が薄く聞こえるなどの変化がみられることはありますが、接続しているオーディオ機器が故障したり破損することはありません。

下の動画は、海老澤先生が「インピーダンス・マッチング」について解説しているものです。こちらも併せてご参照ください。



インピーダンス合わせの目安「ロー出し・ハイ受け」

先の解説では、MC型カートリッジと昇圧トランスの間でインピーダンスのマッチングを取ることが望ましいと述べました。この際、カートリッジ側の内部インピーダンスと、昇圧トランス側の対応インピーダンスの数値はカートリッジ側が低く、昇圧トランス側が高くなる、「ロー出し・ハイ受け」の状態が望ましくあります。これは出力(送り出し)側機器のインピーダンスに対し、入力(受け)側機器のインピーダンスが高い状態であれば出力側の伝送ロスを避けることが可能なためで、カートリッジの接続に限らず、音響機器同士の接続全般に適用されることです。

なお基本的に、市販されているMC型カートリッジとその内部インピーダンスに対応しているMC昇圧トランスの間には、この「ロー出し・ハイ受け」が成り立つように設計されています。そのため、使用するMC型カートリッジの内部インピーダンスと昇圧トランスの対応インピーダンスが整合もしくは近似、また範囲内であればこの原則が適用されていると考えて差し支えありません。

下の動画は、海老澤先生が「ロー出し・ハイ受け」について解説しているものです。こちらも併せてご参照ください。

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