ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2023.09.05
リードワイヤー

リードワイヤーについて Vol.1 導体素材編

本ページでは、レコード針(カートリッジ)再生に用いるリードワイヤーの導体(電線のうち、電気が流れる金属部分)について解説を行います。

リードワイヤーをカートリッジやヘッドシェルに取り付けたり交換する方法や、取付ネジについて解説したページもございますので、先に「リードワイヤーの交換方法について」「レコード針のヘッドシェル取付方法について」「カートリッジのヘッドシェル取付用ネジについて」「ヘッドシェルについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

リードワイヤーの導体に用いられる素材とその特徴



リードワイヤーの取付位置を示した図

リードワイヤーカートリッジ本体とヘッドシェルの間で結線され、音声信号の伝送を担っています。1本あたり数センチメートル程度の長さしかないため、オーディオシステム全体の信号伝送経路から考えるとこれが占める割合はごくわずかです。しかしアナログレコードの再生システムにおいてはカートリッジ本体に最も近い、音声信号の最上流の伝送に用いられるため、その役目は極めて重大です。

オルトフォンとリードワイヤー

世界で初めて7N高純度銅を導体に用いたリードワイヤー、Ortofon 7N・LW1(生産完了)


カートリッジメーカーであるオルトフォンは、リードワイヤーの重要性を強く認識しています。リードワイヤー端子の表面が非メッキであることが一般的だった時代に14金メッキ端子のリードワイヤーを発表したり、世界に先駆けて7N高純度銅線のリードワイヤーを製品化するなど、古くから様々な取り組みを行ってきました。

アナログカートリッジの出力電圧は概ね0.2~5mV程度、高出力なものでも10mV程度です。カートリッジがピックアップした極めて微細な音声信号を減衰させずに伝送させることができれば、極めて高いレベルで録音に高忠実(Hi-Fi)な音楽再生を行うことが可能となります。かつてケーブルブームの黎明期にオルトフォンが発表した「7N・LW1」と「8N・LW10」は、その音質に対する絶大な効果によりリードワイヤーの枠内にとどまらず、オーディオケーブル全体の導体高純度化、また種類の多様化をもたらす画期的な製品となりました。

この流れを受け継いだ現行のLWシリーズも、同様にレコード盤の音溝に刻まれた音楽信号を減衰させずに伝送することを至上命題として開発されています。ただ、アクセサリーパーツの交換で自身のオーディオシステムの音づくりをしていくこともオーディオの、またアナログの醍醐味です。

オルトフォンのリードワイヤーは、高品質な導体を用いて減衰を防ぎながらも各素材の妙味を生かした音色づくりを特徴とし、合計4種類のラインナップを備えています。

ここからは、オルトフォンの製品に使用実績があったり、現行製品で用いられている導体素材を例にとって各素材の紹介を行います。

Ⅰ.OFC(無酸素銅)

全てのオーディオ用高品質ケーブルの祖となった無酸素銅(英:Oxygen Free Copper)は、その頭文字を取ってOFCと呼称されています。

工業用材料であるタフピッチ銅(TPC、純度99.9%程度)から更に不純物を除去し、純度を99.96%以上(JIS H 3100による規定)としているものであれば最低限の基準として『OFC』を名乗ることが可能ですが、オルトフォンでは純度99.99%の4N-OFCを採用して導体素材の品位を保っています。

サウンドの傾向としては、癖が無くフラット、後述する高純度銅に比べると中音域の密度感に優れ、エネルギッシュであるという印象をもちます。

オルトフォンの単売リードワイヤーではLW-6Nでハイブリッド用導体として採用しているほか、フォノケーブルの6NX-TSW1010シリーズでも同じくハイブリッド用導体として採用しています。


Ⅱ.PC-Triple C

PC-Triple Cを用いたリードワイヤー、Ortofon LW-3C

PC-Triple Cは、高純度な無酸素銅に数万回の鍛造を施し、素材内部の結晶方向を一定に揃えた後に焼鈍(アニール)を行って単結晶に近い状態とし、導電特性を向上させることを狙って開発された素材です。

サウンドの傾向としては、クリアでレンジ感に優れ、独特の硬質感を感じます。ナローレンジなカートリッジやオーディオシステムと、敢えて組み合わせても面白い素材です。

オルトフォンの単売リードワイヤーでは、LW-3Cで単体の導体として採用しています。

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Ⅲ.6N高純度銅線

6N高純度銅線とOFCをハイブリッドさせたリードワイヤー、Ortofon LW-6N

4N(4-Nine、純度99.99%)を超える超高純度銅のさきがけとして誕生した6N(6-Nine、純度99.9999%)高純度銅とオルトフォンの関わりは深く、1980年代末に本素材が実用化されてすぐにMC型カートリッジSPU Referenceシリーズ(1989年発売)のコイル巻線として採用しています。その後、オルトフォンでもオーディオ・ヴィジュアルを問わず様々なケーブルに用いられ、ハイエンドな導体として高い評価を受けてきました。現行製品では、フォノケーブルの6NX-TSW1010シリーズで6N高純度銅+OFCのハイブリッド導体を採用しています。

6N高純度銅線とOFCをハイブリッドさせたフォノケーブル、6NX-TSW1010シリーズ

サウンドの傾向としては、OFCよりも更にクリアでワイドレンジとなりつつ、程よくエネルギッシュさも感じられる印象を受けます。

オルトフォンの単売リードワイヤーでは、LW-6NおよびLW-7Nでハイブリッド用導体として採用しています。


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Ⅳ.7N高純度銅線

7Nおよび6N高純度銅線をハイブリッドさせたリードワイヤー、Ortofon LW-7N

7N(7-Nine、純度99.99999%)高純度銅は、6N高純度銅の純度を更にワンランク上げたものです。1990年代初頭に日本で開発されたこの素材は純銅導体の頂点を極めたものとして当時絶大な人気を誇り、オルトフォンは7Nおよび8N高純度銅を導体に用いたオーディオケーブルの先駆者として様々なモデルを製品化しました。

Ortofon 7N・LW1リードワイヤーと7N高純度銅を用いたRCA/XLRケーブル(生産完了)

先に述べた7N・LW1リードワイヤーもそのひとつで、現行製品のLW-7Nはその後継モデルにあたります。7Nおよび6N高純度銅線をハイブリッドした導体は、双方の利点を絶妙に生かして理想的な音色づくりを行っています。

また、7N高純度銅線のサウンドの傾向としては、6N以上にクリアでワイドレンジ、かつ緻密さも感じられるという印象を受けます。

オルトフォンの単売リードワイヤーでは、LW-7Nのハイブリッド用導体として採用しています。


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Ⅴ.銀メッキ銅線

純銀線と銀メッキ銅線をハイブリッドさせたリードワイヤー、Ortofon LW-800S

銀メッキ銅線は、銅線の表面に銀メッキを施した導体です。銅線の表面に異種金属となる銀をメッキすることで、銅線に銀特有の煌びやかな音色を乗せることができます。

サウンドの傾向としては、銅線素材に比べ重厚で煌びやかですが、後述の純銀線よりは暖色な音色と感じられる印象を受けます。銀線の特徴は保ちながら、銅線のニュートラルな傾向も一緒に楽しむことが可能な導体です。

オルトフォンの単売リードワイヤーでは、LW-800Sのハイブリッド用導体として採用しています。

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Ⅵ.純銀線

純銀線を用いたリードワイヤー、Ortofon LW-1000S(生産完了)

貴金属である銀(Ag)は、宝飾品などに使用されるだけでなく電気の伝導率が銅を超えて最高であるという性質をもっています。そのため、理論上では最もハイ・フィデリティ(Hi-Fi、高忠実度)に音声信号を伝送することができます。このことから、ハイエンドなオーディオ製品では配線材や音声信号を伝達させる端子部分などに銀素材を用いているものもあります。

MC型ユニットの発電コイルに銀線を採用した、Ortofon SPU Gold GE(生産完了)

また、オルトフォンは銀線の持つ特性に早くから着目し、1981年に発表したSPU Gold GEでこれを発電コイルの巻線導体に採用しました。重厚なSPUのサウンドにもたらされた銀特有の煌きは大きな反響を呼び、SPUシリーズの多様化に至る嚆矢となりました。現行製品では、SPU Meister Silver MkⅡに高純度銀の巻線を採用しています。

高純度銀線の発電コイルを備えた、Ortofon SPU Meister Silver MkⅡ

カートリッジの銀線コイルに与えられた高い評価を受け、オルトフォンは高純度な銀線のオーディオケーブルを開発しました。下の写真で示したフォノケーブル、TSW-5000 Silverシリーズはその一例で、輝かしいシルバーサウンドはやがて8N・7N超高純度銅とともにオルトフォンのケーブルラインナップの一翼を担うまでになります。

信号線に純銀線を用いた、Ortofon TSW-5000 Silverシリーズ(生産完了)

信号導体に4N純銀線を用いたラインケーブル、Ortofon Silver Reference(RCA/XLR)などはその代表例です。銀線特有の重厚感と透明感、そして煌びやかな高域という特徴がもたらす独特の魅力はファンの心をつかんで離さず、カートリッジからケーブルに至るまでの全てを銀線で揃えている方もおられると伺います。

純銀線を用いたラインケーブル、Ortofon Silver Reference(生産完了)

オルトフォンの単売リードワイヤーでは、LW-800Sのハイブリッド用導体として採用しています。

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ここまで、リードワイヤーに用いられる導体6種類についての解説を行いました。それぞれの特徴を理解した上でリードワイヤーを吟味すると、ご自身が思い描く理想のアナログサウンドにもう一歩近づけることでしょう。その一助として本ページをご活用頂けたなら、これに勝る喜びはありません。

リードワイヤーについて Vol.2 接続端子編に続く

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