ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2023.04.10
ヘッドシェル

カートリッジのヘッドシェル取付用ネジについて

本ページでは、レコード針(カートリッジ)をヘッドシェルに固定するための取付ネジについての解説を行います。カートリッジをヘッドシェルに取り付ける方法について重点的に扱っていたり、基礎的な内容について解説したページもございますので、先に「レコード針のヘッドシェル取付方法について」および「カートリッジについて Vol.1 基礎編」のお目通しをお勧めします。

Ⅰ.ヘッドシェル取付ネジの概要

カートリッジ本体のヘッドシェル固定用ネジ

レコード再生用のカートリッジは、多くの場合2本の取付ネジを用いてヘッドシェルに取り付けられています。ヘッドシェル側もこれに合わせ、2本のネジを取り付けたり貫通させるためのネジ穴が開けられています。

また、基本的に取付ネジは頭に「すり割り」と呼ばれる1本の溝が刻まれたマイナスネジか、キャップ式の六角ボルトが用いられます。このため、俗に言う「ネジの山を舐めた」状態にはなりにくくなっています。

カートリッジ本体やヘッドシェルのネジ穴位置の幅は、1/2インチ(12.7㎜)

そしてカートリッジ側のネジ穴位置の幅は、上図に示した通り多くの製品で1/2インチ(12.7㎜)となっています。これはオルトフォンのカートリッジや製品に限らず、英SME社のトーンアームに付属したヘッドシェルや多くの日本製カートリッジでも共通です。

また、カートリッジ取付ネジに用いられる素材は非磁性体(磁石に反応しない、銅や真鍮・アルミなど)の金属もしくは樹脂を用いるのが一般的です。仮に磁石に引き寄せられてしまう磁性体(鉄や鋼、SUS430に代表される一部のステンレスなど)の金属でつくられたネジを用いると、カートリッジ内部に内蔵された強力なマグネットに引き寄せられてカンチレバーやスタイラスチップに当たり、破損するなどして取り返しのつかない事態になる可能性があります。このためカートリッジ固定に市販のネジを用いる際は、絶対に磁性体金属のネジをカートリッジ取付に使用しないでください。

オルトフォンでは、新品で販売している自社カートリッジには真鍮製、もしくはアルミ製の取付ネジを付属させています。この2種の特徴について、以下に述べてゆきます。

ⅰ.真鍮製取付ネジ 

Ortofon LH-10000ヘッドシェルに真鍮製ネジで取り付けられたMC Diamond

真鍮製の取付ネジは、後述するアルミ製のそれに比べて質量が大きい(重い)ため、同じく重質量な(本体が重い)カートリッジとの相性が良いといえます。そして、アルミに比べると再生音の重心が下がり、クリアに聴こえる傾向にあります。カートリッジ本体の自重が10gを超え、更に使用トーンアームの対応自重に余裕がある場合は真鍮製ネジの使用が望ましい傾向にあります。

また、真鍮はアルミに比べ素材としての強度があるため、カートリッジ取付時に誤ってネジを破損させる可能性が少なくなります。

ⅱ.アルミ製取付ネジ

Ortofon SH-4ヘッドシェルにアルミ製ネジで取り付けられたOM Pro S

アルミ製の取付ネジは、カートリッジ本体が軽量なもの(おおむね10g以下)との相性が良い傾向にあります。軽質量のカートリッジはヘッド部分(ヘッドシェルとカートリッジ)の質量を小さく(軽く)した方が性能を発揮する傾向にあるため、多くのMM型カートリッジや軽量なMC型カートリッジにはアルミ製ネジを使用した方が望ましいといえます。ただ、アルミ製ネジは真鍮製ネジに比べて柔らかいため、ネジの締め付け時などに無理な力をかけたりするとネジが破断する可能性があります。破断の状態によってはネジの取り外しが出来なくなることもあるため、アルミ製ネジには極端な力をかけないようにしてください。

なお上記2点の内容は、あくまで「理論上は望ましい」という趣旨として述べています。非磁性体でさえあれば、自身の好みに合わせてネジの材質を変えてみることに特段の問題はありません。

Ⅱ.オルトフォン製品の取付ネジは、「M2.5」

日本製カートリッジの多くには、「M2.6」のネジが付属されています。これは日本工業規格(当時)のJIS C 5503で定められた規格に国内の各社が準じているためで、デンマーク製であるオルトフォンのカートリッジはこれに準拠していません。そのため、日本製カートリッジに付属している取付ネジをオルトフォンのカートリッジに取り付けようとすると、完全に締まらないことがあります。

さらに、「M2.6」のアルミ製ネジを無理にオルトフォンのカートリッジのネジ穴に取り付けると、カートリッジ本体の穴とネジの穴径やピッチが合っていないため、ネジが外れなくなる恐れがあります。

ちなみに、ここで述べた「M〇〇」は、「規格上の直径が〇〇㎜」という意味を現わしています。オルトフォンのカートリッジに付属している取付ネジの規格は「M2.5」につき、規格上の直径は2.5㎜です。それに対し、日本製カートリッジに付属している取付ネジは「M2.6」のため0.1㎜の差があります。数字だけ見ると微々たる差のように感じられますが、高い精度を持ったネジ同士の間ではこの差は大きなものです。そのため、下の写真のようにカートリッジ本体にネジ穴が切られているオルトフォンのカートリッジに対し、「M2.6」のネジは絶対に使用しないでください。

現行のオルトフォン製品では、カートリッジ本体に直接ネジ止めするタイプが主流

なお、オルトフォンはこの「M2.5」径のカートリッジ取付ネジ(真鍮製)セットを公式オンラインショップで取り扱っています。オルトフォン純正の取付ネジをご入用の場合は、あわせてお目通しください。

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