ortofon JAPAN CO,LTD.

MC Vertex

レプリカントを超えた「頂点」、世界初の新形状スタイラス

新たな「頂点」となるMC Vertexでは、これまでにない最高性能の新形状スタイラスをつくることが決められ、その開発には多くの時間が費やされました。オルトフォンには誕生から30年以上にわたり、最高のスタイラスとして用いられ続けてきたOrtofon Replicant 100がありますが、これを凌駕するのは容易なことではありません。そこで開発陣は次世代型の新形状スタイラスを考案するとともに、加工技術をよりシビアに構築するところからチャレンジしました。地球上でもっとも硬い素材であるダイアモンドを1㎛の単位で精緻に加工することは大変な困難を伴いますが、我々はダイアモンドをより広く、より薄く加工することに成功しました。こうして新たに誕生したのが、音溝をより「正確」に、かつ忠実にトレースできるVertex Diamondスタイラスです。

●出力電圧 (1kHz, 5cm/sec.): 0.3mV ●チャンネルバランス (1kHz): 0.1dB ●チャンネルセパレーション (1kHz): 30dB ●周波数特性 (20Hz-20,000Hz): ±1dB ●水平コンプライアンス: 9μm/mN ●スタイラスタイプ: Vertex Diamond ●スタイラスチップ半径: r/R 4/110μm ●カンチレバー素材: 無垢単結晶ダイアモンド ●カンチレバー表面:レーザーポリッシング ●適正針圧: 2.5g ●トラッキング角度: 23° ●内部インピーダンス: 19Ω ●推奨負荷インピーダンス: 100Ω以上 ●コイル線材:高純度銀 ●カートリッジボディー素材: SLMチタン/DLCコーティング ●自重:15g ●JAN:5705796235593
定価
¥2,700,000(税別)
(税込¥2,970,000)

スタイラスチップとして最高の性能を誇るVertex Diamondは、「ラインコンタクト」の理想を追求するために正面からみた接触半径を110㎛、レコード盤の信号面に接触させる側面の走査半径を4㎛としました(註:この半径の値は、大きいほど直線に近く、小さいほど急な円弧となります)。これはOrtofon Replicant 100スタイラスの正面100㎛/側面5㎛を凌駕するものであり、より一層その理想に近づいたといえます。
ちなみに、新たなVertex Diamondスタイラスの正面110㎛/側面4㎛という曲率半径の策定には、オルトフォンが長年培ってきた知見が大いに役立てられました。スタイラス側面を薄くするとラインコンタクトは理想に近づきますが、極めて薄いスタイラス側面の先端を信号面にラインコンタクトさせた場合、その表面各部にかかる圧力についても考慮せねばなりません。これはスタイラスから先のカンチレバーやダンパー、さらにはカートリッジ本体の自重や適正針圧の値にも影響する極めて重要なもので、ひいてはカートリッジが再生するサウンドのキャラクターにも影響してきます。そのため、Vertex Diamondスタイラスでは側面の走査半径をあえて4㎛と設定しました。これとあわせて正面側の接触半径を大きく伸長させ、110㎛としたことでラインコンタクトの接触面積は大幅にアップ。その結果、信号面の振幅に対する走査精度を極めて高いままに保ちながらラインコンタクト面の接地圧を最適な状態で均質化することに成功しました。世界初の新形状スタイラスであるVertex Diamondが表現するものは、これまでに無い異次元のサウンドです。

精緻の極み、レーザー切削と研磨による新開発のダイアモンド・カンチレバー

「頂点」を名に冠したカートリッジである以上、MC Vertexに信号の伝達速度が最も速いダイアモンド・カンチレバー以外の選択肢はありません。本機に用いられる無垢単結晶ダイアモンド・カンチレバーもまた、世界初のVertex Diamondスタイラスチップに相応しくあるよう高度な加工技術が新たに盛り込まれています。まず挙げられるのは、ダイヤモンド・カンチレバー先端付近に開けられたスタイラスチップの取付穴です。この加工には最先端のレーザー切削技術が用いられており、カンチレバーに肉眼での視認が困難なほど小さく、また高精度な取付穴を開けています。この接合部とスタイラスチップの寸法公差は非常に厳しく設定されており、無垢ダイアモンドのスタイラスチップを同一素材のカンチレバーで隙間なく抱え込めるというひとつの理想を実現しています。
ちなみに、この無垢単結晶ダイアモンド・カンチレバーに施されているのはこの精緻な先端加工だけではありません。カンチレバーの表面全体に、レーザー照射による研磨を行うことで極めて高精度な平滑化加工を施しています。カンチレバーに限らずの話ではありますが、振動する部品の表面に細かな起伏が存在すると、極めて微細なレベルの不要共振が発生したり、カンチレバー内部での正確な振動(信号)伝送が阻害されて歪みとして現れるなどの機械的な影響が生じる恐れがあります。特にダイアモンドは信号伝達速度が最速であるため、これが微細なものであっても起伏が信号に与える影響は大きくなります。MC Vertexは「頂点」であるがゆえに、一見では些末と思われることも軽視せず、考えられうるだけの徹底した対策を施しています。

最適な質量分布を考慮、DLCコーティングを施したチタンハウジング

本機はこれまでのイメージを一新し、新時代の「頂点」に相応しいものとするためハウジングのデザインと形状を大きく変更しました。カートリッジ天面の幅はヘッドシェルと同程度とし、底面側は逆に極力狭くしたT字状の形をしています。これはレコード再生時にトーンアームとカートリッジのハウジング、カンチレバーやダンパーを含む振動系の動作を最適化させるためのもので、カートリッジ動作時の実効質量を小さくするねらいがあります。そして我々は10年以上にわたり、ハウジング内部形状やネジ穴、天面の突起などもレーザー溶融で自在に一体成型できるSLM(SelectiveLaser Melting)技術への習熟につとめてきましたが、このVertexではハウジングの材料密度や肉厚、内部形状を格段に最適化しただけでなく、再生時のダンピング効果向上と不要共振の吸収を目的とした特殊な空洞をあえてハウジング内部に設けました。これにより、ハウジングに軟質素材を用いずとも共振をコントロール可能としています。その上で、ハウジング表面には精緻なレーザー刻印のロゴを入れ、DLC(Diamond-Like Carbon)による硬質皮膜処理を施しました。この表面処理により、SLM成型のチタンハウジングは独特の風合いをもつ、洗練されたモノトーン仕上げの外観となりました。

出力向上と格段の高精度化を実現した、空芯タイプの磁気回路

オルトフォンはこれまでに、空芯コイルのMC型カートリッジを積極的に開発して数々のモデルを輩出してきました。これはアーマチュア(コイル巻芯)が磁石に反応しない非磁性体である方が、振動系の動作をマグネットの磁力に影響されづらいという利点があります。数十年にわたる研究の成果として、我々は空芯コイルの出力電圧を0.2mV(例:MC Diamond)まで向上させました。しかしVertexではこれをさらに発展させ、オルトフォンの空芯モデルでは初となる0.3mVの出力を実現させています。これに加えて、本機の磁気回路は各パーツおよび組立時の精度をこれまで以上に向上させています。これはそのまま、チャンネルバランスとセパレーションの向上として現れており、再生音の明瞭さ、定位感や奥行きのよさをもたらします。これまでにない別次元の「正確(accuracy)」さこそ、我々が頂点として定めたVertexに求めるものです。その鍵となるのが、ここに一新された磁気回路です。

高純度銀線を用いた巻線、WRDと専用ダンパー

Vertexのコイル巻線には、オルトフォンのフラッグシップではMCJubilee以来となる高純度銀線を採用しました。この導体は、導電率が金属素材の中で最高であり、同時に最小の電気抵抗率を誇ります。本機は19Ωというこれまでのオルトフォンの通例に囚われない内部インピーダンス値をもつため、音色のみならず導体特性の点でも本機に最もふさわしい材料であると判断され、採用に至りました。そして振動系の新規開発に伴い、WRD(Wide Range Damping)システムを採用したダンパーも本機専用に新規設計されました。高音域と低音域用の2枚のダンパーにプラチナ製のディスクを挟んだこのシステムは、トレース能力の向上とともに周波数の高・低に応じて振動系を最適な状態で支持・制動することができます。本機は世界初のVertex Diamondスタイラスと数多くの最新技術を盛り込んでいるため、ダンパー開発は未知への挑戦に等しいものとなりました。試聴とデータ分析を重ね、多くの難関をクリアして完成した本機のダンパーは、自信をもって「頂点」といえる完成度を誇ります。
100年を超える長い伝統を自覚していても、その墨守の行き着く先は停滞です。次の100年も引き続き、レコード再生の新たな境地を皆様と楽しんでゆくためにも、オルトフォンが歩みを止めることはありません。