カートリッジの理想のひとつを現したConcorde、シェル一体型の「Music」。 シルキーで滑らか、繊細なサウンド
かの超音速旅客機に似たフォルムが特徴的な、オルトフォンのConcorde。その姿はヘッドシェルとカートリッジのボディが一体化され、針先方向に向けて細くなってゆく独特なものです。この特異なカートリッジが製品化されたきっかけは、誕生した1979年当時にカートリッジメーカー各社が強く指向していたある理念に起因します。
当時のカートリッジの多くは、ローマス(軽質量)・ハイコンプライアンス(針先が動きやすい)を至上命題として開発されており、カートリッジ、トーンアームともに現代の一般的なそれよりも更に高感度であることを求められていました。これを極限まで追求した時、理想的な形状として現れてきたのがこのシェル一体型ボディです。そしてこのボディは、当時の理想を現実のものとしただけでなく、SPUシリーズから引き継がれてきた『簡便さ』というコンセプトもそのまま継承しました。カートリッジ本体のヘッドシェル取付や位置の調整、リードワイヤー配線を必要とせず、ユニバーサル型トーンアームのシェルコネクターに装着してゼロバランスと針圧を合わせたらそのまま使用可能、さらに針先→ヘッドシェル後端間の長さはSPUと同じく52㎜。まさに現代におけるユニバーサルデザインの先駆けであるともいえます。
これを最初に具現化した旧Concordeシリーズには、同時代のMC型としては驚異的に小型化された磁気回路と高性能なダンピング機構を備え、当時の高性能モデルとして一世を風靡し、現代オルトフォンのハイエンドなMC型の技術的な礎となったMC200と兄弟機のMC100をはじめ、ローマス・ハイコンプライアンスモデルとして誕生したVMSタイプのConcorde30、20、10、STD、さらにはその極致となったアームパイプ一体型のSME 30Hなど、多彩なラインナップが存在していました。高感度なトーンアームとの相性の良さ、色づけのない「正確(Accuracy)」な音色を特徴とし、他のカートリッジにみられない強烈な個性を有することから根強いファンに恵まれたConcordeシリーズは、Hi-Fiカートリッジのラインナップから一時的に姿を消した後もレギュラーモデルとしての復活を願う声が絶えることはありませんでした。これに応えるべく、我々は旧世紀の驚異であったそれらをさらに凌駕する、新時代のHi-Fi用Concordeの開発に着手。圧倒的な進歩を遂げた現代技術と、より洗練された自社のダンパー技術の全てを注ぎ込むことで21世紀の「正確」なサウンドを再定義することに成功しました。
カートリッジのピックアップする信号が正確であれば、音楽は奏者のイメージ通り、自ずとそこに現れます。Concordeが奏でるもの、それはただ「Music」のみ。この理念は、原型モデル発表から45年を経てなお変わることはありません。
※Concorde MusicシリーズはMM型カートリッジにつき、ボディに装着されたStylus(針先ユニット)部分をユーザー様ご自身で交換することができます。また、本シリーズにはカートリッジ本体部分に互換性があり、Red・Blue・Bronze・Black・Black LVB 250各機種の本体部分は全て共通です。
- 定価
- ¥70,000(税別)
Concorde Music Bronzeの特徴
Bronzeのスタイラスチップには、かつてのハイエンドモデルであるConcorde MC200やConcorde 30にも使用された高性能な楕円針の一種、無垢のファインラインを採用。そのため、Red・Blueよりも更にピックアップ能力が向上しており、シルキーで滑らか、かつ繊細な音色を身上とするカートリッジです。
Ⅰ.上位グレードに統一された、全機種共通の一体型ボディ
精悍なマットブラックを纏ったConcorde Musicシリーズのボディは、最上位のBlack LVB 250からエントリーモデルのRedに至るまで全て共通です。これはシリーズ各機種のスタイラス(交換針)が互換性を持ち、これを挿し換えることで容易にアップグレード可能であることを意味しています。
そして本シリーズのボディ側先端にあるスタイラス装着部分には、意図的な着脱時以外には抜け止めとして機能するロック機構が設けられています。旧シリーズには存在しなかったこの画期的な機構は、単にロックとして機能するだけではなく、スタイラスが定位置に装着されたと認識できることも目標として開発されています。そのため、既に装着されているスタイラスを抜き取り、別のスタイラスを装着すると「パチッ」というクリック音を生じさせます。これにより、機構上とフィーリング双方でのスタイラスの確実な装着を実現しています。
さらに、旧Concordeシリーズでは一体成型となっており、折損時の修理が不可能であったフィンガー(指かけ)部分は、交換用の機構が新たに設けられたことで差し換え可能となりました。そしてボディ内部にはオルトフォンが誇る独自のMM型用磁気回路が備えられ、4本のスプリット・ポールピン(Sprit Pole Pins)に巻かれたコイル巻線は全ての機種で銀メッキ高純度銅線を採用しています。これまで、オルトフォンのMM型カートリッジでは2M Black LVB 250などの上位モデルにのみこの線材が用いられてきましたが、Concorde Musicシリーズでは敢えてコスト面を無視し、Red・Blueも含めた全機種での採用に踏み切りました。
ちなみに、Musicを含むConcordeシリーズはテーパー(先細り)型のヘッドシェル一体構造を特徴としています。一般的なカートリッジは機構の都合上、ヘッドシェル先端側に取り付けられており、動作時の重心位置が先端側に寄ることを避けられません。そのため、トーンアームの軸中心位置からカートリッジ先端方向をみた際の実効質量(この場合、カートリッジを含むアーム可動部分の質量)がカートリッジ先端側で増大し、(テーパー型と比較すると)トーンアームの感度や動作速度に差が生じます。しかし、Concordeシリーズのテーパー型かつヘッドシェル一体のボディは、カートリッジ先端および針先部分の質量が最小となり、逆にヘッドシェル後端側に寄るにつれて質量を増大させてゆきます。更にはユニバーサル型シェルコネクターと一体となった本体基部の存在により、重心位置は完全にシェル後端側に寄せられています。そのため、Concordeシリーズはアームの動作時にカートリッジ起因の動作遅れを生じさせることなく、ただ「正確」に音声信号をピックアップすることができます。
またこのテーパー形状はカートリッジボディに存在する不要な体積を極限まで減らすことにも貢献しており、結果として動作時に生じうる不要共振が再生音に付与されづらいという効果もあります。そして不要共振の徹底した排除を目指した結果、新たなConcordeシリーズのボディ組立にあたっては超音波接合によって各部品を結合させる最先端の方式を採用しました。これにより、ボディとは異種素材である接着剤を排することで不要共振の発生を防ぎ、同一素材で構成されたモノコックボディという理想的な状況を実現しています。
Concordeシリーズの流麗かつスマートなボディは、「accuracy in sound」というオルトフォンの理念をただ実直に、ありのままに具現化したものです。
Ⅱ.完全新規開発された、Concorde Musicシリーズ専用ダンパー
ダンパーは、オルトフォンがカートリッジの生命線として極めて重視しているパーツです。いかにピックアップ能力に優れたスタイラスや、伝達速度に優れたカンチレバーを使用したモデルであっても、その振動系(スタイラスチップ、カンチレバー、コイルあるいはマグネットなどの可動部分)の支持と制動を司るのはダンパーです。オルトフォンは、自社カートリッジの全てのダンパーをデンマークの本社工場内に設けたダンパー専用ラボラトリーで開発・生産しています。
もちろんConcorde Musicシリーズのダンパーも同様で、開発時には直近の2M Black LVB 250やConcorde MkⅡ Eliteから得られた知見の全てが投入されました。また先に述べた通り、Concordの重心位置は一般のカートリッジと異なるという点も考慮され、本シリーズのダンパーはこれまでの2Mシリーズのものとも異なる専用の完全新規仕様として誕生しています。
Concorde Music introducing PV
【公式YouTubeチャンネル】アナログ研究・技術評論の第一人者、海老沢 徹 先生によるカートリッジのダンパーについての解説動画