ortofon JAPAN CO,LTD.

アナログオーディオ大全

2022.12.26
初級編

冬に発生するレコード針の音ビリ付き、割れへの対処

本ページでは、気温の低い冬季にレコード針(カートリッジ)の再生音がビリ付いたり、割れるなどの症状が発生した際の対処方法についてご説明します。

気温に関係なく発生する音のビリ付きや割れへの対処方法については、「レコード再生時の音ビリ付き、割れへの対処について」を先にお目通しください。

また音がビリ付いたり、もしくは割れたりせずに再生中にかすれ・途切れなどの症状が発生する場合は、「レコード再生時の音かすれ・途切れへの対処について」に記された対処方法をお目通しの上、実際に試してみてください。

Ⅰ.冬季に音のビリ付き、割れが発生する理由

オーソドックスなMC型カートリッジ、SPUの振動系を示した図
オルトフォンのMM型カートリッジ、2Mシリーズの内部構造

具体的な対処方法を述べる前に、冬季にカートリッジの再生音がビリ付いたり、音が割れたりしやすくなる理由を解説します。

上図2つはMC型およびMM型カートリッジ振動系の構造を模式的に示したものです。レコード盤の音溝からスタイラスチップが音声信号を読み取ることで、カンチレバーは上下左右に動作します。このカンチレバーの根元を支えているのが、一般的にゴム系素材でつくられているダンパーです。

ダンパーに使用されているものも含め、一般的にゴム系素材は気温の変化によって復元力や柔らかさが変化する性質をもっています。そのため、気温の低下によってカートリッジの内部が文字通り芯まで冷やされてしまうと、カンチレバーの動作を支えるダンパーが硬化してしまいます。その結果、カートリッジのトレース能力が低下して再生時の針飛びが生じたり、再生音のビリ付きや音割れが生じることがあります。

オルトフォンのSPUシリーズ

そしてオルトフォンのSPUシリーズは、開発時に業務用途での使用を想定した設計がなされているため、他の一般的なMC型カートリッジに比べダンパーが大きく頑丈なつくりとなっています。そのため、一旦内部が完全に冷やされてしまうと音割れやビリ付きが発生する可能性が高くなりますので、特に冬季には(ある程度)保温された再生環境で使用することを推奨します。


Ⅱ.カートリッジ使用時の適温は、概ね20℃

一般的に、カートリッジを動作させる際の適温は摂氏20℃前後です。これはダンパーに使用されているゴムが低温下では硬化し、(極端な)高温下では柔らかくなることでカートリッジがスペック通りのトレース性能を発揮できなくなったり、設計者が意図した音色からかけ離れたサウンドとなってしまうことを防ぐ意図があります。特に、高温下の軟化に比べると冬季の気温低下に起因するダンパーゴムの硬化は再生音に与える影響が大きく、発生した症状を聴感上で判別することも容易なため、より一層耳につきやすい傾向があります。

季節の移ろいと共に再生音のビリ付きや音割れが目立ち始めた場合は、まず設置環境の室温を一旦上げてみましょう。なお、この「20℃」はあくまでも目安であり、厳格に維持せねばならない数値ではありません。

なお、低温下でゴムが硬化して音の割れやビリ付きが生じているカートリッジは、正常時に比べて振動系の動作が完全ではありません。針飛びを起こしてレコードの盤面を損傷したり、振動系や盤の音溝に想定以上の負荷をかけてしまう恐れもありますので、これらの症状を防ぐためにも低温の環境下でレコード再生を行うことは避けてください。


Ⅲ.冬季の再生音ビリ付きや割れが生じやすい環境

先に述べた通り、カートリッジ動作時の適温は20℃前後です。これを大きく下回り、再生環境の室温が10℃以下となった時に症状が発生することが多いようです。

この症状が発生する環境にはある程度共通の特徴があり、様々な理由で一日の室温の上下幅が大きいほど症状も発生しやすくなるようです。その典型的な例を以下の3点に集約しましたので、再生環境がこのいずれかに該当する場合は冬季のレコード再生時に「気温」についての意識を持っておくことを推奨します。


ⅰ.夜間に暖房を切っている部屋

日中は十分に保温しているものの、夜になると暖房を切る部屋に再生機器を設置している場合、部屋の室温に応じて機器自体の温度も変化します。そして一旦低温状態となった機器の内部は、暖房が入った後も室温ほどすぐには暖まりません。この状況下でレコード再生を行うと、カートリッジのダンパーゴムが低温で硬化したままの状態となってしまい再生音にビリ付きや割れなどが生じる場合があります。

そして低温下ではカートリッジのダンパーゴムが硬くなりやすいことを先に述べましたが、これは音の出口側であるスピーカーユニットのゴムエッジやサスペンションにも当てはまります。このため、冬季は設置環境となる部屋と再生機器が十分に暖まった段階でレコード再生を開始することを推奨します。

ⅱ.内陸部や山間部に位置する部屋

カートリッジを含む再生機器の設置環境が内陸部や山間部に位置する場合、海岸近くや川沿いに比べ昼夜の寒暖差が大きい傾向にあります。暖房の有無にかかわらず、暖かな日中にレコードを再生した際は異常がみられないものの、冷え込んだ夜間に再生すると症状が発生するなどの場合も、再生環境の気温が原因である可能性があります。

ⅲ.冬季の最低気温が氷点下となることが稀な地域

気温に起因して症状が発生したとみられるお問い合わせは、冬季の最低気温が概ね0℃~10℃程度の範囲となる地域から頂くことが多いように感じられます。これらの地域の居住環境は寒冷地のような本格的な保温や住居への断熱・気密を必要としない場合が多いため、室温が外気温の影響を受けやすい傾向にあります。その場合は再生機器内部の温度もあわせて上下するため、一旦冷えてしまうとビリ付きや音割れが生じる可能性は高まります。

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